
世界を揺るがしたドナルド・トランプ米大統領の関税政策は、7月上旬に90日間の一時停止期間が終わりを迎える。一口に「トランプ関税」といわれるが、中身や推進する勢力を調べていくと、実は関税は「3層構造」となっており、政治的な思想や狙いがそれぞれ異なる。従って、関税の種類によって交渉に用意すべきカードは変わる。特集『トランプ人脈 全解剖』の#7では、関税政策の背後にある思想とキーパーソンから、交渉余地と今後の展開を探る。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)
相互関税「90日一時停止」は7月上旬に終了
関税の狙いは「保護主義」だけではない
ドナルド・トランプ米大統領が4月に発表した関税政策。相互関税の上乗せ部分については、90日間にわたる一時停止期間が間もなく期限を迎える。日本政府が日夜交渉を続けているところだが、民間企業もただ手をこまねいているわけにはいかない。
今回の一連の関税政策を説明するに当たり、「保護主義」という言葉がよく使われる。しかし、トランプ政権内で関税を推進している勢力は、保護主義のみに基づいているわけではない。
むしろ、自由貿易体制を新しい形で進めるために関税を主張している勢力も存在する。そもそもこれまで自由貿易を推進してきたのは、民主党よりも共和党だ。一夜にして全員が保護貿易の信奉者になるはずがない。
「トランプ関税」とひとくくりにされることも多いが、関税の中身や推進する勢力を見ていくと、大まかに「3層構造」へと“分解”することができる。相互関税(基本税率)、相互関税(上乗せ税率)、品目別関税では、それぞれ採用されるに至った政治的背景が異なるのだ。
従って、関税の種類によって交渉に用意すべきカードと、米国側のキーパーソンも変わってくる。次ページでは、トランプ関税を支える政治的思想とキーパーソン、そして交渉余地について詳解する。