「男性がセックスで冒す6つの間違い」「オーガニックで買うべきはこの野菜」「他人に相談できないカラダの問題12件」。
 
 これがウェブMDで最近アクセスの多かったニュースのトップ3である。その内容はご自身で確認していただくとして、同社は今、世に数多ある医療・健康情報サイトの中で最も注目されている成長株である。アクセス数を着々と伸ばし、ヤフーと提携し、一時はグーグルの買収対象と目されていたほどだ。

 ウェブMDが扱っているのは、上にあげたようなやや下世話かつ教養的な健康情報だけではない。ガンから糖尿病、リューマチ、心身症、不眠症にいたるまで、さまざまな病気に関する綿密な医学情報、医薬品の詳細情報、医者や病院の検索、症状チェッカーまで、かなり専門的な医療・健康情報が、ここでは容易に入手できる。

 アメリカでは、インターネット・ユーザーの30%以上が毎月医療・健康情報サイトを利用する。調査会社コムスコアによると、医療・健康情報サイトは過去1年、ユニーク・ビジター数で他のインターネット・サイトの4倍の速さで成長を遂げたという。

 そのトップを走るのが、ウェブMDで、今年7月には1727万7000万人のユニーク・ビジターを獲得、ディスプレイ広告表示でも、AOLやMSNなどが運営する他の医療・健康情報サイトを押さえて18.6%のトップシェアを奪い取った。この分野の広告主にとって注目のサイトとなっているのだ。

ドットコム・バブル崩壊から生還
売り上げ、利益ともに2桁増

 ウェブMDが目立った成長を遂げたのはここ数年のことだが、実は同社には長い歴史がある。

 設立は1998年。その翌年、ネットスケープ創業者のジム・クラークの会社、ヘルシオンと合併した。ジム・クラークのビジョンはインターネットによってアメリカの非効率的な医療制度を根本から覆すことで、当時のウェブMDは、個人カルテのデジタル化、医療機関のネットワーク化、医療保険申請のオンライン化などを含めた壮大な計画だった。

 その投資家リストには、有名なベンチャーキャピタル会社クライナー・パーキンズ・コーフィールド&バイヤーズ、インテル、デュポンなどが名を連ねた。一時期、マイクロソフトも技術協力を通した提携関係を結んでいた。

 だが、その後訪れたドットコム・バブルの崩壊で、ウェブMDも大きな痛手を被り、その後数年間は“地下潜航”を余儀なくされた。赤字を解消したのは、ようやく2004年になってからだ。その間に、ジム・クラークの壮大なビジョンも縮小され、現在は消費者や個人、大企業の社員向けのそれぞれに合わせた医療・健康情報のポータルという位置づけになっている。