金融危機による不景気風を受けて、アメリカの店は右を向いても左を向いてもバーゲン尽くしになっている。高級デパートから格安スーパーまで、ともかく財布の紐を閉じたままの消費者にどうにかして金を出してもらおうという魂胆だ。

 だが、そんな努力もむなしく、消費は目に見えて冷え込んでいる。1年前に比べると、9月の消費はホテル宿泊で4.9%、衣料品で5.5%、家具類で13.3%、エレクトロニクス製品や家電で13.8%下がった(マスターカード・アドバイザーズのクレジットカード利用状況調査)。

 どんなにバーゲンを仕込んでも、ハイエンドなデザイン製品ショップ・チェーンから格安デパートまで、最近経営破綻した店舗は枚挙に暇がない。今年のクリスマス・ショッピング・シーズンはかなり暗いものになりそうだというのが、大方のアナリストの予想だ。

 そんな中で、相対的に好調を維持しているのがコストコである。日本にも出店しているのでご存知の方も多いと思うが、コストコはいわゆる「倉庫型卸売り店舗」と呼ばれる小売り形態である。飾り気のない巨大な倉庫のような店舗内を、これまた巨大なショッピング・カートを押して買物をする。缶詰20個入りパック、トイレット・ペーパー60個入りなど、商品の括りも大きいが、精肉からフラットパネル・テレビ、iPod、ダイヤモンド等々、品揃えも恐ろしく充実している。自動車や保険の購入も可能だ。

ウォール街に背を向ける
シネガルCEOの日本的経営

 コストコの魅力は何と言っても価格の安さにあるが、実は同じ格安量販店のウォルマートとはまったく異なった店であることが人気の秘密になっている。独自のスーパー・チェーンに加え、コストコとも競合する倉庫型格安量販店チェーンのサムズ・クラブを抱えるウォルマートは、ともかく価格競争だけに主眼を置いた小売店。一方、コストコは、後述するように、「宝探しの店」と呼ばれるところが違っている。

 コストコは、全米とプエルトリコに540店舗を構え、5000万人の登録会員を抱えている。1店舗あたりの商品の種類は4000余りで、これはウォルマートが10万種以上の商品を提供しているのに比べると、かなり少ない。なぜなら、コストコの低価格は、限られた商品を大量に仕入れ、さらに利ざやを通常の小売店の半分である10%前後に抑えることで達成されているからである。

 メンバーが払う年会費は50ドル(約5000円)。コストコ側としては、メンバーシップ制によって客のロイアリティーを高め、客側としては年会費のもとを取るために、繰り返し買い物に訪れざるを得ないという構図だ。