中国発のグーグルへのサイバー攻撃――。この事件は、一般のネットユーザーだけでなく、米国政府をも震撼させた。だが、これをまたとない商機として世界の表舞台に躍り出て自らを見事にアピールしている企業がある。ITセキュリティ会社のMcAfeeだ。
グーグルが事件を公にしたわずか2日後の1月14日、マカフィーは同社のウェブサイトでこの事件はマイクロソフトのブラウザー、インターネット・エクスプローラー(IE)の脆弱性を突いて実行されたゼロデイ攻撃(セキュリティ・ホールを修正するパッチが提供されるより前に、そのホールを突いて攻撃が行われたりすること)であると指摘し、「オペレーション・オーロラ」と呼ばれるこのサイバー攻撃の詳細を説明した。
オペレーション・オーロラでは、グーグル以外に少なくとも30社の企業が攻撃対象になっている。報道によれば、アドビ・システムズ、ヤフー、ジュニパー・ネットワークス、ノースロップ・グルマン、ダウ・ケミカルなどが含まれ、IT業界だけでなく、航空、化学、メディアなど幅広い産業分野で大企業のシステムがハッカーによって侵入され、IP(知的所有権)侵害を受けているという。
グーグルではIPの他にも、中国を始めとする人権活動家のGメール・アカウントにアクセスされた形跡が発見されたという。アメリカで最強のIT企業と目されるグーグルのサービスがセキュリティ上脆弱だったことが露呈した上に、結果的に人権侵害に利用される可能性を与えたとして、関係者に計り知れないショックを与えている。周知のとおり、この事件はすでにグーグルの中国撤退の可能性まで含む大きな議論に発展している。
マカフィーは現在、オペレーション・オーロラの攻撃対象となった企業や政府関連機関の要請を受けて、その実態のさらなる解明と防衛戦略の立案に関わっているとされる。盛んな自己アピールも伴って、まさにサイバー国防の「第一人者」の地位をほんの数日のうちに築いてしまった感もあるほどだ。