ウクライナとの価格交渉が決裂したとして、ロシアがパイプラインへの天然ガス供給を1月1日からストップ。20日から供給が再開されたが、欧州17ヵ国に被害が広がり大騒動となった。背景には原油価格急落に伴う財政悪化に焦るロシア、通貨危機で瀕死のウクライナ、それぞれの事情がある。
1月の最低気温はマイナス5度。最高気温も2度にしか上がらないブルガリアでは、年明け早々、一般家庭暖房用ガス供給が停止。国民は厳しい寒さにさらされた。スロバキアは非常事態宣言を出し、企業へのガス供給制限を開始するなど、東欧諸国を中心に大パニックが巻き起こった。
事の発端は1月1日。ロシアの天然ガス世界最大手ガスプロムが、ウクライナへのガス供給を停止したことだ。
両国のガス問題は、2006年から毎年続いており、年末年始の恒例行事になった感がある。しかし、騒動は両国間だけでは収まらない。ウクライナを通るパイプラインから天然ガス供給を受けている欧州諸国も、とばっちりを受けたからだ。
しかも、今回の紛争は長期にわたり、供給が完全に止まった国は東・南欧7ヵ国、供給減少を含め被害を受けた国は計17ヵ国と、過去に例を見ない大騒動に発展した。
この異常事態に驚いたマスコミは、「ウクライナが(反ロ軍事同盟である)NATO加盟を目指していること」「ロシアの宿敵グルジアに武器を提供したこと」などを原因に挙げた。しかし今回は、「政治」ではなく「カネ儲け」の観点から見てみることにしよう。
原油価格・通貨急落で
ロシア財政事情が悪化
第一に注意すべき点は、「ウクライナはロシアに多額の債務を抱えている」という事実である。読売新聞08年12月31日付〈ウクライナがガス代滞納、ロシアが1月から供給停止か〉という記事を見てみよう。
〈両国は31日を期限に、未払い問題の解決と、1月以降もガスを供給するための新契約締結に向け大詰めの交渉を行っている。しかしロシアはウクライナが21億1800万ドル(約1906億円)の滞納を解消しなければ、新契約の締結に応じない方針を崩していない。〉
ウクライナはロシアに1900億円以上の借金があったのだ。その後、一部は返済したが、まだ完済はしていない。