公正取引委員会は2月末、日本音楽著作権協会(ジャスラック)に対し、同業他社の新規参入を阻害したとして、独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を出した。だが、ジャスラックは公取委に対して徹底抗戦の構えで、法廷闘争に至る可能性もある。ジャスラック対公取委の行方を探った。
「命令には承服できない。公取委の判断は誤りであり、事実関係を徹底的に争う」
公取委がジャスラックに対して排除措置命令を出した当日、ジャスラックは記者会見を開き、席上、加藤衛理事長は不満を露(あらわ)にした。
ジャスラックは排除措置命令に不服の場合、公取委に審判請求できる。その審決に不服があれば、東京高等裁判所に審決取り消し訴訟を起こすことになる。
問題となったのは、ジャスラックと放送局とのあいだで行なわれる音楽著作物の使用料金の徴収方法だ。
徴収方法は2種類ある。1つは楽曲1曲を使用回数ごとに徴収する「個別徴収」。もう1つが一定金額で使い放題の「包括徴収」。
公取委が違法行為と認定したのはこの包括徴収である。ジャスラックの使用料規定によれば、地上波のテレビ、ラジオなどの放送局の場合、前年度の放送事業収入の1.5%を支払えば、ジャスラックの管理楽曲を自由に使用できる。
だが、裏返せば、放送局がジャスラックの管理楽曲の使用割合を減らしても支払額は変わらない(グラフ参照)。
一方でジャスラック以外の管理楽曲を使うには追加費用が発生するため、放送局は新規参入の管理事業者との契約を避けたがる。
現在、放送分野における管理事業者はジャスラックのほかにはイーライセンス1社のみ。2007年度における放送分野の売上高(使用料徴収額)は、ジャスラックが266億円であるのに対し、イーライセンスはわずか7万9000円と、比較にもならない。