衆議院選が迫り、各党のマニフェスト(政権公約)も出揃った中、地方分権への議論が活発化している。特に、各党と知事会による道州制の議論は注目の的だ。地方分権の要として重要視されている道州制は、本当に地方分権を実現できる手段なのだろうか。そして、自民党、または民主党が政権を獲得した場合、地方分権政策はどのように進むのだろうか。鳥取県知事時代に「改革派」として絶大な支持率を誇った慶応義塾大学・片山善博教授に、総選挙後の道州制の行方から地方自治のあるべき姿までを語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林 恭子)
霞が関主導の“道州制”なら
地方分権は後退する
かたやま・よしひろ/慶應義塾大学法学部教授。1974年東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省。99年鳥取県知事、2007年退任して現職。著書に『市民社会と地方自治』など。 |
――究極の地方分権の形として“道州制”が提案されているのは、なぜか?
中央政府は本来、外交や防衛、マクロ経済、金融などに専念すべきだ。しかし、現在は市町村がやるべきことまで中央政府が引き受けているため、我が国の中央集権体制は手詰まりになり、純化・解体再編が必要視されている。
そこで解体再編を行なうとなれば、膨大な事務と権限が放出されるため、それをどこで処理するかが問題となる。それを現在の47都道府県で行なうことは難しいため、「受け皿として、広域で強力な権限や力量を持った道や州を作るべきだ」というのが、本来あるべき「分権型の道州制論」だ。
ところが、そういう問題意識を持たないまま道州制を唱えている人たちがいる。
特に霞が関の人々は、多少の手直しをするにしても、基本的な構造を変るつもりはない。地方を47ブロックから10~11ブロックに再編して、チープガバメント(政府支出を必要最小限に抑えた政府)を作る「行政整理型」の“道州制”を考えているようだ。
つまり、“道州制”といってもタイプが2通りあり、それが混同されたまま道州制が議論されている。そんな状況のまま道州制の是非を問うことは、非常に問題だ。