昨年、サブプライム問題を跳ねのけ、右肩上がりの上昇を続けたインド株。ところが今年に入って、外国人投資家の“利食い売り”で株価は急落。最近設定されたファンドには、基準価格が6000円台に下がったものも出た。インドははたして買いなのか売りなのか。商都ムンバイを訪れ、インド経済の今後を探った。

 BRICsの一角として、近年驚異的な成長を遂げてきたインド。サブプライム問題が表面化した昨年も、株価は一本調子で上がり続けた。ところが、今年に入って状況は一変。1月に外国人投資家は1300億ルピー(約3500億円)を売り越して、株価は10%を超える下げを記録した。サブプライム問題が深刻さを増した3月に入って株価は下げを加速。代表的株価指数であるSENSEX指数はピークから約25%減の1万0760.52ポイントにまで下落した(3月14日現在)。

 ただ、今でも、ファンドで1兆円近い残高を持つ日本の個人投資家の意欲は旺盛だ。「株価が下がったところで買いを入れている」(高橋庸介・ピーシーエー・アセット・マネジメント マーケティング本部長)と市場関係者は口を揃える。今は、絶好の買場か、それとも投げ売り時なのか――。

 人口1400万人を擁するインド最大の都市、ムンバイ。英国統治時代から続くインドの商業の中心地だ。株価暴落をよそに、街は繁栄の一途。街中の至るところが工事中だ。もっとも、油圧ショベルやクレーンなどの建設機械はまだ少なく、大半を人力に頼った道路、大型ビルの建設現場を目にすることができる。

 企業関係者を中心に日本との往来も増え、全日本空輸は昨年、廃止していたムンバイ直行便を全36席がビジネスクラスのビジネスジェットとして復活させた。事前購入でも往復40万円を超える席が、平均で6割も埋まっている。

5年間で一変した中産階級の生活水準

 7~9%の経済成長を続けた結果、2006年、インドのGDP(国内総生産)は日本円で100兆円超えを達成。この10年で一人当たりGDPは2.5倍(現地通貨ベース)になった。IT産業で働く従業員など、中産階級以上の所得はさらに増えている。