吉田博一氏(71)、エリーパワー株式会社・代表取締役社長。慶應義塾大学法学部卒。住友銀行(現三井住友銀行)副頭取、三井住銀リース社長・会長を歴任、慶應義塾大学大学院教授(2008年3月まで)。

 2003年、三菱自動車の周辺は「リコール問題」で大きく揺れていた。

 その当時の自身の行動を、エリーパワーの吉田博一社長はこう振り返る。

「(三菱自動車は)いまのアメリカの自動車産業のように大きな転換期だった。だから、(当時の)東京三菱銀行の三木(繁光)会長と会って、僕はこう言った。 『このままやっていても(三菱自動車は)一流になることはない。どうせなら、EV(電気自動車)だと思う』と」。

 当時、吉田氏は金融界のトップから、慶應義塾大学の電気自動車「エリーカ」プロジェクトの総合プロジューサーへと転進していた。

 その後しばらくして、三菱自動車では、現在の「i-MiEV」を目指した研究開発が本格化した。吉田氏の「そのひと言」が現在の日本EVブームに火をつけたと表現するのは少々大袈裟かもしれないが、その足跡と直近での活動を見る限り、「吉田氏=EV界(+蓄電池界)の風雲児」と言い切れると思う。

 また、吉田氏は、神奈川県の松沢成文知事とも親交が深い。全国に先駆けて神奈川県が推進する電気自動車普及計画「EVイニシアティブかながわ」についても、吉田氏の「ひと言」の影響力は大きい。

 エリーパワー株式会社は、2006年9月28日、吉田氏を含む当時の慶應義塾大学電気自動車研究関連のメンバーら4人が資本金1500万円で設立した。その後合計6回の第三者割当増資(主要割当先企業:大和ハウスグループ、エネサーブ、大日本印刷、シャープ、国際石油開発帝石、ミツウロコ、ジャフコ、興銀リース、横浜キャピタル、安川電機)を行い、資本の額は93億6550万円(内資本金は46億9650万円)へと成長。社員数は67人となった。役員には富山化学工業、日本電池などの開発責任者も加わり、社外取締役とシニアアドバイザーには投資先の社長や役員などトップビジネスマンが名を連ねている。