日本航空(JAL)が策定した優先株による大型増資計画案が最終調整中だ。「国策的会社だから結局はつぶせない」(大手銀行幹部)という事情の下、引き受け要請した銀行や商社など14社から合意をほぼ取り付け、1500億~1600億円規模の増資が3月までに実施される見通しである。
今回の増資は「債務者区分引き上げのための資本増強」(銀行幹部)。先送りは許されず、今期内に実施されることが、JAL存続には欠かせない。
JALの主力取引銀行は、日本政策投資銀行、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行。政投銀を除く各行は昨年に金融庁検査の指摘を受け、JALの債務者区分を「破綻懸念先」に引き下げた。
破綻懸念先への融資は、貸し倒れに備えて引当金を大幅に積まなければならず、基本的に追加融資はできない。今期中に債務者区分を引き上げなければ、来期以降の融資要請に応じることができず、JALの資金ショート、銀行団の債権焦げつきという最悪の事態を引き起こしかねない。
JALは2月29日に発表する新中期経営計画に、この資本増強策を盛り込む予定。要請を受けた商社など複数の企業は、「引き受けるか否か、社内審査の最中」(商社上層部)だが、月末までに全社の最終回答が出揃う。引き受け要請先として、主力四行とともに三菱商事、三井物産、双日、丸紅、伊藤忠商事、住友商事、新日本石油、ジャパンエナジー、出光興産、コスモ石油などの社名が伝えられており、各社とも外堀は埋められている。
関係者の次なる課題は、「外部から大物経営者を会長職に招聘できるか否か」。新町敏行会長が今春、退任することが決まり、会長職は空席となる。
増資要請に向けて好業績を捻り出さなければならないJALは、人件費削減や資産売却など、現経営陣が取り組める最大級の合理化策を今期中に施した。一方で、来期は燃油コストが今期に比べて増加する見通しであり、人件費削減も今期並みの規模は難しい。
ようやく調達した資金を食いつぶさずに再建へつなげるには、生え抜きの経営陣を縛る社内外のしがらみを断ち、人件費削減、組織改革、路線再編などで抜本的なリストラを断行できる経営者が求められる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)