外資規制問題で注目された空港整備法改正。原案に盛り込まれた“強力な規制”は、じつは、外資規制だけではなかった。国土交通省は、航空会社の路線・運航計画にも網をかけようとしたのである。

 政府は今月7日、外資規制の条項を削除した改正案を閣議決定した。空港運営・管理会社に対する外資の株式保有比率を議決権ベースで3分の1未満に抑える規制の是非をめぐり、政府・与党内は紛糾。規制導入の結論は年末まで先送りされた。

 そもそも改正法の原案を作成した国交省は、詳細な内容をなかなか明らかにしなかった。1月下旬、ようやく全容を知った航空業界関係者たちは、顔面蒼白となった。

 「国交省は、国内の路線計画やダイヤ、運賃に口を挟むつもりだ!」

 原案のなかに、「国土交通大臣は日系航空会社に対し、空港の効果的かつ効率的な設置および管理を図るために必要な指導、助言、勧告ができる」という趣旨の一文があったのだ。

 路線計画やダイヤ、運賃の采配は、航空会社にとって経営の成否を握る最重要事項。監督官庁に、「A空港が効率的に運営できるように、B社とC社は運航ダイヤを調整せよ」と介入されれば、自由競争に基づく事業戦略は崩壊するだろう。

 過去20年、長い時間と紆余曲折を経て、国内の路線計画、ダイヤ、運賃は、認可制や免許制から届け出制へと移行し、自由化が進められてきた。改正案はそれを無にしかねない。業界団体の定期航空協会は、あわてて国交省へ異議を申し立てた。

 一方、自民党政務調査会で航空対策特別委員会委員長を務める太田誠一・衆議院議員は年明け、特別委員会に対して法改正の審議が要請されていないことを国交省航空局に問いただしていた。その回答は「党政調の国土交通部会で一回取り上げれば十分ではないか」と、ずいぶん消極的なものだったという。部会ではさまざまな議題を取り上げるため、航空分野の議論に割ける時間は限られる。

 「形式的な話し合いですませようというのか」。太田議員は当局の意向を退け、1月24日、特別委員会を開いた。

 その後も2月初旬までに計3回もの国土交通部会・航空対策特別委員会合同会議を開催。議員からは原案への異論、反論が噴出した。路線計画やダイヤに対する干渉についても、反対意見が相次いだ。定期航空協会は1月末、航空局から「ダイヤ、路線等の事業計画・運航計画、運賃その他の航空運送事業に直接関わる事項は、空港法の規制対象とはしない」と保証する文書を受け取り、ひとまず胸をなで下ろした。

 外資規制の議論は、政争に発展し、時間切れ。今国会での決定は見送られた。「(政治家が)航空局を甘やかし過ぎ、そのつけが回ってきた」と太田議員。国交省は明らかに、他省庁や永田町との調整を怠っていた。

 「安全保障」を理由に提案された外資規制は、空港会社に多くの天下りポストを持つ国交省の「“己”の安全保障だ」という批判も聞かれる。

 開かれた議論を避け、閉ざされた航空行政を志向する国交省の“時代錯誤”が続く状態で、世界の航空自由化の流れに対応できるのか。日本の空の憂鬱は続く。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)