「タバコをカートン買いする客がめっきり増えた。タバコに限れば、3月の売り上げは前月比4割アップですよ」――。
鹿児島市内のあるコンビニ店主はホクホク顔だ。
この3月、鹿児島県など九州の一部で全国に先駆け「タスポ(taspo)カード」対応の自動販売機が設置された。タスポは「成人識別ICカード」で、未成年者の喫煙防止を目指す日本たばこ協会などが導入を進めている。
このタスポの思わぬ恩恵を受けそうなのが、コンビニなど大手小売りだ。というのも、タスポを持ち歩かないと、今後自販機でタバコは買えない。そのタスポ入手には各種証明書や顔写真提出などの面倒な手続きが必要で、いきおい「タバコはコンビニに行ったついでに」ということになる。
「取り扱い銘柄数を増やして売り場面積を拡大することも検討中」(セブン―イレブン・ジャパン)と、各社はやる気満々だ。
一方で、顔色が冴えないのは、自販機メーカー。当初はタスポ導入に伴う自販機の買い替え需要を当て込んでいたが、「買い替えるどころか、(タスポを読み取る)識別装置や通信装置を付けるだけで1台12万円もかかる。自販機を撤去するほうがマシ」(個人経営の小売店)という声も多い。
3月以降の買い替え需要は思ったほど盛り上がっておらず、「今後自販機離れが進んだら、売り上げが伸び悩みそう」(自販機メーカーのクボタ)。このようなありさまでは、街角からタバコ自販機が姿を消すのも遠い先の話ではないかもしれない。
本来、未成年者の喫煙防止を徹底するために導入されたタスポだが、彼らがコンビニになだれ込めばなんの意味もない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 小尾拓也)