苦境にあえぐ日本や米国を尻目に、ブラジルの自動車市場が活況にわいている。2007年の販売台数は約246万台で、前年比28%増。08年1~3月は31%増と、同国史上最高を記録した。需要に供給がまったく追いつかず、車種によっては納車まで数ヵ月待ちという状態だ。
販売急拡大の背景にあるのは、長期ローンの普及だ。
ブラジルの政策金利は、11.25%と世界最高水準にある。昨年来4%台にとどまっているインフレ率も徐々に上昇中で、期待された利下げは見送られ、年内に13%程度へ引き上げの見込みだ。
自動車ローンも、年利11~19%ときわめて高い。それでも、年利30%以上だった数年前に比べれば、格段に利用しやすくなった。経済好調で個人所得も増えた。08年のGDP成長率予測は5.2%へと上方修正され、消費者は好景気の持続を確信しつつある。
一方、銀行側もローンの拡大にひた走っている。ブラジルの銀行はサブプライム問題の影響も受けず、昨期いずれも空前の利益を計上した。あり余るカネの借り手を探して、自動車ローンに限らず住宅ローンやクレジットカードの与信基準も引き下げ続けており、「かなり低所得の層にも貸し付け始めている」(ジェトロ・サンパウロ・センター)という。
昨年の自動車ローン残高総額は前年比30%増、クレジット総額のGDP比は今年2月時点の35%から、年末には40%に達すると予測されている。
これは他国と比べるとむしろ低い比率だが、現地の銀行関係者などには「行き過ぎ」を懸念する声も出始めた。「日本のバブル期を思わせる」、「米国サブプライムローンの二の舞いになるのでは」と危惧する日系企業関係者もいる。
現在のところ債務不履行率の上昇は見られないが、今後の動向には十分注視する必要がありそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 河野拓郎)