「過払い金返還請求は依然として高止まりしたまま。それどころか今年に入ってから、検察庁からも取引履歴の開示請求が来た」と、ある大手消費者金融の関係者はため息をつく。
いまや過払い金の返還額は、大手数社合わせて月に300億円を超える。ビジネスチャンスととらえた一部の弁護士や司法書士の積極的な攻勢が中心だが、昨年からは新たに市役所などの地方自治体も過払い金に注目し始めている。
狙いは、固定資産税など税金を滞納している市民からの徴収分に、過払い金を回収し充当することだ。そのため消費者金融に対して、取引履歴の開示請求を相次いで行なっている。
そこに検察庁も加わったと見られる。現時点では、取引履歴の有無を確認してきただけのため詳細は不明だが、「おそらく滞納されている交通違反者などの罰金に充当しようと考えているのではないか」と先の関係者は推測する。
もっともこれらの開示請求に対し消費者金融は、個人情報保護などを理由に抵抗している。
消費者金融の言い分は、「税金などの滞納者リストを民間金融機関に渡していいのか。本人の同意を得るべきだ」というもの。対して自治体は「銀行は開示請求に応じている。そもそも国税徴収法(地方税にも準用)では調査権が認められており、同意は不要」と、議論は平行線をたどる。
いまや地方税の滞納額は2兆円を超える。約1800に及ぶ自治体のうち、過払い金返還請求はまだ数十件程度にとどまる。できればこれ以上の広がりは防ぎたい、というのが消費者金融各社の望みだ。だが検察庁まで加われば、議論が一気に進む可能性もある。消費者金融の憂鬱はますます深まりそうである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)