世界的な景気後退の波が、建設機械業界にも波及してきた。

 期初には大半の製造業が弱気の見通しに終始するなかで、大手各社が増益予想を発表していた数少ない好況業種だったが、ここへきて暗雲が漂ってきたのだ。

 建機好調の牽引役となってきたのは新興国や資源国。これらの地域ではプラス成長が維持されているものの、それ以上に先進国、特に内需の減速が目立ってきた。

 7月29日に公表されたコマツの第1四半期決算は、売上高が前年同期比で中国37%増、アジア・オセアニア20%増と伸びながらも、対照的に日本4%減、米州3%減、欧州CIS2%減の落ち込みを見せた。建機国内2位の日立建機も同様に新興国頼み。先進国での景気減速で世界の建機需要予測を下方修正したほどだ。

 7月末に日本建設機械工業会が発表した6月の建機出荷金額も、前年同月比2.6%減で69ヵ月ぶりのマイナスに落ち込んだ。外需は同11.4%増と75ヵ月連続のプラスを維持したが、国内の同28.8%減の大幅な落ち込みが足を引っ張ったのだ。

 こうした弱含みの数字が公表される直前の7月22日には、建機世界最大の米キャタピラー社が、この4~6月期決算で、新興国での売り上げが貢献し、前年同期比34%の増益と四半期ベースでの最高益を発表していた。日本の建機業界にも同様の力強さが期待され、株価が上昇する場面もあったが、その後の弱気な決算で、コマツも日立建機も株価は一転して約2割下落した。

 そもそも公共事業削減の影響で弱いはずだった内需が好調だったのには、カラクリがある。新興国への中古機輸出が旺盛で、新車同様の価格で売れたため、耐用年以前に次々と売却され、大量の買い替え需要が発生していたのだ。

 だが、買い替え対象となる中古機がほぼ一巡したことや、現地生産が増えたことで、ついにこの好循環にも綻びが見え始めた。

 建機業界も新興国頼みが鮮明となってきた。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木豪)