6月末に、民主党が社民党、国民新党と組んで、労働者派遣法改正法案を衆議院に提出し、波紋が広がっている。
法案の目玉は、「(専門業務を除いた)製造業派遣の禁止」である。これまで、民主党は、派遣労働者の劣悪な労働環境に警鐘を鳴らすことはあっても、「製造業派遣の禁止」には、慎重な姿勢を取ってきた。というのも、「禁止することで失職する労働者数十万人の受け皿を用意できなかったからだ」(人材派遣会社社長)。
言うまでもなく、民主党が、その姿勢を転換したのは、迫る衆議院選挙において、両党との選挙協力を睨んでのことだ。ある電機メーカー幹部は、「法案が衆議院を通過するわけではない。非現実的だ」と言う。確かにそのとおりかもしれないが、民主党が規制強化へ動いた“事実”は非常に重い。
仮に、民主党が政権与党となって労働政策を打ち出す際に、国会提出までした法案骨子を変えることは考えにくい。いずれ、製造業派遣の禁止は現実のものとなるかもしれない。別の電機メーカー幹部は、「いつかは、くると思っていた。派遣社員に依存しない要員体制を整えなくてはならない」と気を引き締める。
2000年以降、シャープやキヤノンといった電機メーカーが、こぞって、生産拠点の“国内回帰”の方針を掲げた。だが、いくら液晶パネルやカメラが高付加価値製品であったとしても、固定費の圧縮は不可欠だ。派遣が禁止されれば、コストは上昇してしまう。
加えて、状況が悪過ぎる。自動車や電機などの輸出型製造業では、需要停滞が続くうえに、急激な円高が直撃したため、為替リスクも顕在化している。人件費上昇と為替リスク拡大が、製造業の海外移転ラッシュを加速させることは必至な情勢だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)