需要激減で赤字転落となる企業が続出する化学業界にあって、住友化学は積極策に打って出る。4月20日、合弁でサウジアラビアに建設した石油化学コンビナートの第二期計画の企業化調査(FS)を開始すると発表した。

 紅海湾岸にあるサウジアラビア西部のラービグの地名から「ラービグ計画」と名づけられた第一期は、石油精製・石油化学プラントを建設し、その総投資額はじつに103億ドル(約1兆円)に達した。最上流かつポリエチレンなど汎用品中心の第一期に対し、第二期は自動車の部材ほかに使われる熱可塑性エラストマーなど多様な製品の事業化を検討する。

 投資総額はFSの結果待ちだが、数千億円の規模に達する見通しだ。機能不全を起こしている金融機関からの資金調達が可能か懸念されるが、前回同様、国際協力銀行によるプロジェクトファイナンスが活用されると見られる。加えて、ラービグ社が、既存株主に対して株主割当増資を実施し、資金を調達する模様だ。

 まだ第一期も稼働を始めたばかりだが、住友化学の廣瀬博社長は「生活に密着している石油化学製品に力を入れていきたい」と常々語っていただけに、原料コストが安く競争力のあるラービグ社のプラント強化はぜひとも実現したいところだろう。

 2010年9月までにはFSを終了し、投資にゴーサインが出れば14年頃には操業を始める予定だが、経営環境の不透明さがつきまとう。第一期は、世界好況の影響でプラントや資材、労働者の賃金などが高騰して、建設費が当初見通しの2倍を超えた。ところが完成を目前に世界景気が急減速して、製品価格は急落してしまった。

 第二期は、さらに景気の行方が読みづらい。投資判断の難度は低くはなさそうである。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  佐藤寛久)