ブリヂストンは、パンクしても100キロメートル程度走れるタイヤ「ランフラットタイヤ」の新技術を開発した。熱処理技術を向上させ、タイヤのサイドウォール(側壁)につける補強ゴムを薄くし軽量化。課題だったごつごつした乗り心地を改善した。

 今年10月には、採用車が披露される予定。同社は2008年にドイツ車向けを中心に325万本を出荷したが、富岡隆・タイヤ商品戦略室長は「10年後に約2000万本、出荷全体の10%にする。将来的には100%装着を目指す」と強気だ。ランフラットタイヤは、1980年代から身体障害者用の車両向けに開発され、2000年以降、普及し始めた。高速道路でも安全が保てるほか、スペアタイヤがいらないためトランク空間も有効に使える。

 では、“完全装着”は可能なのか。問題は、普通のタイヤの2~3割高いというコストである。取り付けられる車種も限定的でタイヤ販売の体制も整っていない。「取り付けが難しい。工賃も普通の倍」と都内カー用品店員は言う。

 さらに、パンクに気づくよう、タイヤ空気圧監視システム(TPMS)も必要だ。新車装着なら数千円ですむとはいえ、「10円単位で苦労を重ねている」自動車メーカーにとってはコスト競争力の面で敏感にならざるをえない。このため、07年の国内新車の装着率は1%(日本自動車工業会調べ)にとどまっている。

 だが、世界を見渡せば米国は07年にすでにTPMSの装着を義務化。欧州も12年に義務化する方針で、日本でも同様の議論が進むものと見られる。今回の新技術は、小型車や四輪駆動車にも応用でき、日本での議論を後押しすることになるため、ブリヂストンの言う“完全装着”はあながち夢物語ではないかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 小島健志)