新興不動産ディベロッパーの倒産が相次ぐなか、倒産情報に絡んだ株式のインサイダー取引疑惑が多数浮上している。

  9月24日に破産手続きを開始したディベロッパーのリプラスもまた、そのターゲットになったのではないかと見られているのだ。

 背景にあるのは情報管理の甘さ。最近は資金繰り倒産が多いため、倒産前日まで金策に走り回っているケースが大半で、情報が周囲に流れやすくなっている。これが、インサイダー取引の温床になっているという見方は強い。

 リーマン・ブラザーズはインサイダー情報でひと儲けしたのではないか――。

  リプラスの破綻劇をめぐって、こんな見方が強まっている。不動産運用とアパート家賃保証が事業の柱であるリプラスは、サブプライムローン問題で資金調達が困難になり黒字倒産したが、もともと同社が主力とするワンルームマンションは値下がり幅が大きく、資産の傷みが激しかった。

 もう1つの柱である家賃保証事業も後発だったため、「無理な契約により、顧客層が他社に比べて非常に悪い」(不動産賃貸業者)というのが業界の見立てだった。

 だが、その陰で暗躍したリーマンの役割は見逃せない。

  リーマンは破産数ヵ月前にリプラスの支援を表明、入念にデューデリジェンス(資産査定)を行なったが、スポンサーとなることは断念した。リプラス関係者によると、「この後、リーマンはリプラスの経営状況を知ったうえでリプラス株を空売りして利益を上げたのではないか」という疑念がぬぐえないのだ。

 リーマン側は「インサイダー取引の事実はない」としているが、証券取引等監視委員会は今回の一連の取引について大きな関心を寄せている。現にリプラス側はリーマンによるデューデリジェンスの内容や株式売買の手口などを提出した模様だ。

 リーマン以外にも、倒産したアーバンコーポレイション関連で、BNPパリバにもインサイダー疑惑が指摘されている。株価の推移が怪しげなディベロッパーはほかにもあり、これが不動産株式への信頼をいっそう失わせている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也 )