楽天とヤフーの新たな陣取り合戦の幕が開きそうだ。
楽天は10月から、決済機能を他社に提供する「楽天あんしん支払いサービス」を開始した。
楽天の会員はクレジットカードなどの情報をあらかじめ登録しているため、個人情報をそのつど入力しなくても数クリックで買い物ができる。今回のサービス開始で、他社のサイトでも「楽天▼お支払い」ボタンをクリックするだけで買い物が可能になる。
楽天利用者は楽天以外での買い物が簡単になるし、導入企業にしてみれば、4000万人という楽天会員が一気に潜在顧客になる。
ヤフーも同様のサービスをすでに始めている。登録者数1700万人の決済機能「Yahoo! ウォレット」を今年5月から外部に提供、100社が導入ずみだ。導入した「テトリスオンライン」では、会員が10倍に増加するなどの実績がある。
今後、両社はそれぞれの導入サイトの増加を競っていく。
それにしても、決済の手数料収入が入るとはいえ、長年囲い込んできた会員を今頃になって外部に開放するのはなぜだろうか。
ヤフーのページ閲覧数はトップで、楽天も上位にいる。しかし、すでに日本の人口の8割近くがネットを利用しており、このままでは爆発的な伸びは期待できない。
そこで、他社の力を借りようというわけだ。ヤフーでは機能の外部提供を「オープン化」と呼ぶ。井上雅博社長は内部と外部の比率を「1対1にする」とし、Yahoo! ウォレットの外部の導入数を1万社に増やす目標だ。
現在のヤフーのショッピングなどの売り上げは年間約1兆円。実現すれば高島屋規模の百貨店1社分の決済が新たに誕生する。
利用者にとってはありがたい決済機能の外部提供だが、ネット大手にとっては、成長鈍化を避けられるかの試金石でもあるのだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介 )