年末商戦を控えた10月22日、パソコン(PC)メーカーに衝撃が走った。
世界シェア首位のヒューレット・パッカード(HP)が、6月に発売したばかりのミニノートPCを最大25%値下げしたのだ。下位機種の価格は、5万9850円から1万5120円引き下げられ、4万4730円となった。

 値下げ直後の3日間、HPのミニノートPCの1日当たりの販売台数は、値下げ前の10倍にまで跳ね上がった。

 HPがここまで大胆な値下げに踏み切った背景には、台湾エイサーやASUS(アスース)がHPの製品より5000~1万円安い価格設定で売り上げを伸ばしてきたことに対する焦りがある。9月時点の国内ミニノートPC市場のシェアは、エイサー53%、ASUS32%に対し、HPは6%弱にとどまっていた(BCN調査)。

 「ミニノートPCは戦略的な価格設定でシェアを獲りにいく。ノートPC全体で利益を出せればいい」(砥石修・日本HPモバイル&コンシューマビジネス本部ビジネスプランニングマネージャ)。HPは、世界王者のスケールメリットを生かし、市場が未成熟なうちに競合相手をふるい落とす戦略だ。

 国内ミニノートPC市場首位のエイサーも黙ってはいない。11月から、ハードディスクドライブの容量を増やして価格を据え置いた後継機種を投入する。実質的な値下げだ。

 高付加価値路線を堅持してきた日本メーカーも、価格競争からは逃れられない。東芝は、10月下旬の発売直前に、ミニノートPCの価格を7万4800円から5000円引き下げた。

 HPが引き金をひいた価格競争は、エイサーの対抗値下げでさらに激化しつつある。「半年以内に淘汰されるメーカーが出てくる」(氷室英利・ディスプレイサーチディレクター)。立ち上がったばかりのミニノートPC市場は、はや消耗戦に突入した。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛 )