7月11日、世界22ヶ国でアップルのiPhone 3Gの販売が始まった。日本ではソフトバンクモバイルが、今朝7時からソフトバンク表参道で販売を開始。本日正午から全国のソフトバンクモバイル取扱店で販売が始まる。iPhone 3Gは「日本の携帯電話業界に訪れた黒船」とも言われるが、実際に“どこが”それほどすごいのか。その革新的なプロダクトの背景にある、アップルの秀逸なビジネスモデルについて紹介する。(ジャーナリスト 神尾寿)
ほとんどの操作は、タッチパネルに表示されたアイコンやコンテンツを“触れる”ことで行う。 Photo by Masato Kato(画像を拡大) |
iPhone 3Gを手にしたとき、多くの人が感嘆するのが、タッチパネルを用いた未来的なUI(ユーザーインターフェイス)だ。物理的なボタンは4つしかなく、しかも基本操作で用いるものは「ホーム」ボタンと呼ばれる、液晶画面下の四角いマークが描かれたボタンだけ。あとの操作はすべて、タッチパネルに表示されたアイコンやコンテンツそのものを"触れる"ことで行う。
アップルはiPhoneの開発にあたり、タッチパネルの操作体系もすべて新たに創り出した。例えば、画面をトンッと軽くたたく「タップ」はマウスのクリックにあたり、画面を軽く弾く「フリック」では、すばやい表示のスクロールや、画面の切り替えなどを行う。2本の指を画面にあてて開く・閉じる動作の「ピンチ」では、表示画面の拡大・縮小がスムーズにできる。
タッチパネルを用いた携帯電話やスマートフォンは過去にも存在し、昨年の初代iPhone発表以降、急増している。だがiPhone 3GのUIは、すべての機能において、操作体系をゼロから作り直したところが、他社のタッチパネルを搭載したモデルと異なる。UI全般の設計思想が新しく、煩雑さを排してシンプルに作られていることが、iPhone 3Gの優位性になっているのだ。
地域性の差異にはソフトウェアで対応
共通モデルの大量生産で量産効果狙う
さらにタッチパネルを用いたシンプルな操作体系は、iPhone 3Gそのものの収益性にも大きく貢献している。アップルは今回のiPhone 3Gを世界22ヵ国から販売開始し、最終的には70ヵ国に展開していく計画だ。しかし、そこで生産・販売されるiPhone 3Gのハードウェアは、すべてが同一仕様になる予定である。多言語対応や各国キャリアのサービスなど、地域性に根ざす“差異”については、すべてソフトウェアとサービスによって対応する。
また、iPhone 3Gはモデル数が少なく、8GB版と16GB版の2グレードで、色違いを含めても3モデルしかない。メモリー容量と色以外の仕様はまったく同じであり、少し強引にみれば「単一モデル」と言ってもいいだろう。これを世界中で売っていくのだ。
iPhone 3Gはモデルサイクルも、日本の携帯電話に比べて長い。日本では春・夏・冬の3商戦期に1メーカーが複数の新機種を投入するが、アップルのiPhone 3Gは今後1年ほど基本仕様は変えずに販売されると予想されている。しかし、その一方で、iPhone 3Gには「アップデート」という形でソフトウェアを更新する機能があり、“ソフトを新しくする”ことで新機能への対応や細かな改善が行われていく。
他にも、今回のiPhone 3Gにはアップル以外の企業や個人が制作したソフトウェアを、ユーザーが自由に追加する仕組みが用意されている。これによりiPhone 3Gは長いモデルサイクルの中でも、新鮮さや価値が目減りしないのだ。