第6回でお話したように、製造業については、規模拡大によるコスト削減(特に1個当たりの総原価の削減)効果がよく現れました。但し、規模拡大による設備過剰のワナに注意が必要でしたね。これに対して、サービス業の規模拡大によるコスト削減効果はかなり限定的です。一体なぜでしょう。製造業との違いを、ラーメンチェーンの場合で考えてみましょう。
個人でラーメン店を開業する場合の採算
身近な例で説明しましょう。ラーメン店が、麺などの材料費(変動費)が1杯200円、店舗運営費(月額)として、アルバイトなどの人件費30万円、家賃20万円、その他固定費10万とします。ラーメンは600円で販売します。1ヵ月に何杯売れば、損益トントン(損益分岐点)でしょうか?
月額固定費は、人件費30万円、家賃20万円、その他固定費10万の合計60万円です。ラーメンを1杯売ると400円(売価600円-材料費200円)の限界利益が出ます。固定費60万円をまかなうためには、60万円÷400円の月間1500杯の販売が必要です。1500杯は、1ヵ月の損益分岐点販売数量です。1500杯では、1杯当たり固定費は400円(60万円÷1500杯)で、1杯当たりの限界利益と一致しています。
販売数量が増加して、2000杯になれば、1杯当たり固定費は300円(60万円÷2000杯)と100円に下がります。1杯当たりの総原価(変動費と固定費の合計)は、500円(1杯の材料費200円+1杯当たり固定費300円)なので、販売価格600円では、1杯100円の利益がでます。
2500杯なら1杯当たりの固定費240円(60万円÷2500杯)と下がるので、1杯当たりの総原価は440円(1杯の材料費200円+1杯当たり固定費240円)と60円下がり、販売価格600円では1杯160円の利益がでます。このように販売数量が伸びている状況では、1杯当たりの固定費が下がり、総原価も下がり、販売価格を下げても利益がでるわけです。毎月2500杯がコンスタンタントに売れるなら、月40万円(160円×2500杯)の利益がでるわけです。個人事業なら、40万円が、オーナーの月収(所得)になります。
業績好調で100店舗に拡大する場合の採算
1店舗目が好調なので、直営店を増やし、100店舗目を展開するまでになりました。話を単純化するために、各店舗の規模は、1店舗目と同じとします。
100店舗を大量一括仕入で、材料費は1杯当たり160円へと2割低下しました。店舗運営費は、基本的に同じとします。しかし、材料を各店舗に届ける物流費や本部を作って給与計算などの管理業務を行うため、月額200万円の間接固定費が全店舗の共通費としてかかります。