【第6回】 2009年12月03日
キンドルが日本に上陸する日
赤字覚悟のビジネスモデル?
前回、キンドルは「価格破壊モデル」だと書きました。ハードカバー価格が20ドル台半ばに対してキンドル向け電子版はほとんど9ドル99セントという価格設定がされているからです。単純に「安い」ということは、ユーザーにとって最もわかりやすいメリットであることは間違いありません。
もっともこの価格は現在のところアマゾンの負担によって実現しているようです。アマゾンなどの書店が仕入れる「本」の価格は、出版社がつける希望小売価格の50%が基準であり、ハードカバー版とキンドル版がある場合には、出版社はキンドル版についてもハードカバー版に準じた卸価格の設定をしているようです。従って、タイトルによっては、アマゾンはキンドル版を売れば売るほど赤字となる逆ザヤ状態にあるということになります。
これは、アメリカにおいてキンドルが唯一の電子書籍リーダーではないという要因が大きく働いています。現在アメリカでは、キンドルのほか、ソニーによる「ソニーリーダー」、バーンズ&ノーブルによる「ヌーク」が市場に投入され、顧客争いをしています。
いずれも、専用の販売サイトと連動して、いわゆる垂直統合モデルによるコンテンツ流通を行っているのです。現状では各ハードに大きな差はありませんから、どれだけ多くのコンテンツを取り込んでいるのか、が勝負のポイントとなっているということでしょう。
しかしその一方で、出版社から見た場合、どれか1つにしぼるという必要はありません。「本」がA書店で売れようとB書店で売れようとかまわないわけですから、配信用データの作成や管理に手間がかからなければ、すべてのルートに電子版を投入することが、より多くの販売につながるのです。
そして現在、まるでカルテルでも組んでいるかのように、各サイトの電子書籍価格は、多くが9ドル99セントで横並びとなっています。価格帯としてもペーパーバックとほぼ同等のレベルです。この状況をみると、アマゾンとしても、また他の電子書籍サイトとしても「価格破壊モデル」をこれ以上推し進めていく方向にはないと言えるのではないでしょうか。出版社の卸価格、ユーザーの値ごろ感、アマゾンなどのサイト側の(電子書籍端末)普及への期待の3つの要素が、ちょうどこのあたりでバランスを保っているかのようです。
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著者プロフィール
- 村瀬拓男
(弁護士)
1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。
この連載について
グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題に端を発し、日本でも書籍デジタル化の動きが起こり始めている。これらの動きを追いながら、今後本の世界がどのように変化していくのかを検証していく。
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