先週、麻生総理が「生活防衛のための緊急対策」という経済対策を発表しましたが、びっくりしました。内容が余りにひどいからです。
11月の工作機械受注は、前年同月比6割減という凄まじい減少を記録しました。内閣府の景気ウォッチャー調査は2ヵ月過去最低を記録しました。日銀短観での大企業・製造業の業況判断指数は第一次石油危機直後と並ぶ落ち込みでした。日本では欧米と異なり、間違った政策が原因で今年の初めから景気が悪かったのですが、金融危機を境に日本経済もいよいよ非常事態に突入したのです。
政治の無策と官僚主導の集大成
このような場合は財政出動が必要不可欠であり、今のタイミングで経済対策を講じること自体は正しいと言えましょう。問題は対策の中身です。派遣切り対応の雇用対策、地方交付税の増額など、弱者救済のためのその場凌ぎのバラマキのみで、経済成長を引っ張る、成長産業を作り出すといった観点からの対策は皆無です。弱者救済というボトムアップはもちろん大切ですが、今のような非常時には、経済成長を牽引するところにも政府が関与することは不可欠です。それが皆無である今回の経済対策はいかにも貧弱に見えます。
米国の経済対策と比較すると、それがよく分かるのではないでしょうか。米国政府は大規模な公共事業を行うようですが、この際に老朽化したインフラを近代化して米国の競争力を高めようとしています。その他にも再生可能エネルギーなどの成長産業への政府支出(研究開発)などを行うようであり、目の前の危機への対応という観点のみならず危機後も視野に入れた戦略的な財政出動を準備しています。英国も同様に、例えば学校や医療機関へのブロードバンドの整備など、クリエイティブ産業という戦略産業の強化や公共サービスの高度化などの戦略性を持った財政出動を行おうとしています。
これらと比べると、残念ながら日本の経済対策には戦略性や目的意識が感じられません。メディアや政治家が大変だと騒ぐ派遣切り、中小企業の資金繰り、地方の困窮などにお金を出しますとしか感じられません。