【第75回】 2010年02月05日
待つのは音楽産業以上の悲惨な未来か?
出版業界を駆け巡る電子ブック狂騒の罠
電子出版がブームです。アマゾンのキンドルとアップルのiPadの全面対決という様相を呈しているのに加え、様々な企業が新たな電子ブックリーダーを市場に投入しようとしており、新たなネット・バブルの感もあります。電子出版で本の世界が変わると喧伝され、出版業界の救世主のように言われることもありますが、本当なのでしょうか。簡単に検証したいと思います。
果たして普及するか?
まず、電子出版は今度どの程度普及するのでしょうか。アマゾンのキンドルは確かによく出来ています。3月に発売されるアップルのiPadもきっと素晴らしい完成度だと思います。しかし、電子ブックリーダーが紙(書籍や雑誌)に取って代わる程に普及するのでしょうか。
キンドルやiPadの動きが大きく報道されていますが、電子ブックリーダーの世界での販売量は2008年が100万台、2009年が500万台、そして今年は1200万台と推測されています。急速に伸びてはいますが、携帯端末の普及の度合いやペースと比べると、そんなに凄いとは言えません。
ついでに言えば、米国では、5年後に大人の1/3が電子ブックリーダーを使うようになると予測されています。この数字をどう評価するかは、人によって分かれると思いますが、将来推計の多くは大きめの希望値であることを考えると、普及のペースはメディアが騒ぐほどには早くないと考えるべきではないでしょうか。
逆に言えば、書籍や新聞といった紙が消滅することも、考え得る近い将来には起き得ないのです。音楽の世界でCDと配信が併存するのと同じ状況になるのではないでしょうか。
出版業界の救世主となるのか?
次に気になるのは、電子出版が不況に喘ぐ出版業界の救世主になるかのように言われていることです。本当にそうでしょうか。
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著者プロフィール
- 岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。
この連載について
メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。
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