「週刊ダイヤモンド」3月13日号は、ベストセラー『FREE』を特集していました。しかし、私の著書『ネット帝国主義と日本の敗北』をお読みくださった方なら容易に推察できるように、私は『FREE』で述べられている考えが大嫌いです。そこで今週は、『FREE』の何が問題かを説明したいと思います。

フリーランチはない

 最初に、この本が説明しているフリーモデルの4分類というのは、別に取り立てて新しいものでも何でもありません。いわば、ビジネスの工夫、ビジネスモデルの組み方の問題であり、当たり前のことをさも斬新であるかのように説明しているだけです。

 その意味では、“クラウド・コンピューティング”が、データセンターなどの既存のものを組み合わせただけで何も新しい技術要素はないのに、ネーミングだけで新しいソリューションであるかのように見せているのと同じです。ネーミングの勝利と言え、そうしたマーケティング戦略は評価せざるを得ません。

 それにしても、殊更“タダ”を強調し、それがビジネスになるような錯覚を世に与えるのはいかがなものでしょうか。経済学を少しでも勉強したことがある人なら、「フリーランチはない」と聞いたことがあるはずです。そうした当たり前の原則がデジタルやネットの力で変わることなど、あり得ないのです。

 まあその点はしょうがないにしても、この本には特に許容できない点が二つあります。

現実を覆い隠した広告ビジネス賛辞

 第一は、4分類の一つにネット上での広告モデルを入れていることです。そのモデルは、ウェブ2.0時代に喧伝された「無料でコンテンツを提供し、たくさんの人を集めて広告収入を得る」という無料モデルと同じです。