このところ、日本証券業協会の傘下にある「ジャスダック」を中心とした新興市場の再編問題が、非常に混迷しているかのように報じられている。だが、混迷しているのは、再編問題ではなく、むしろ、報じる大手メディアの方ではないだろうか。
各メディアはそろって、問題の本質が、東証マザーズや大証ヘラクレスの10倍前後の手数料を証券会社各社から徴収しないと経営が成り立たず経営危機に陥っているジャスダックの再建問題であることを見落としている。そして、「身売り」「合理化」に抵抗し、保身を図っているとしか思えないジャスダック現経営陣に与する記事を量産しているのが実情と言わざるを得ない。
まず、代表的なメディアの報道の流れをご紹介しておこう。
一連の報道の発端となったのは、朝日新聞が11月24日付で報じた「大阪証券取引所が、ジャスダック買収を打診、日証協と協議」という記事だ。そして週末を挟んで、毎日新聞が同24日付で「大阪証券取引所、ジャスダック買収へ、日証協に提案」と、この報道に追随した。
ところが、翌27日になって、朝日、毎日に先を超された形の日本経済新聞が「新興市場、再編巡り混迷 ジャスダック、独立にこだわる」と報じた。その根拠として、ジャスダックの筒井高志社長の記者会見での「自分の力を強化していきたい」との発言を取り上げているのだ。
フジサンケイ・ビジネスアイも「筒井社長は『2年後に新しい取引システムを導入するなど新しい取り組みを進めている』と単独での存続に意欲を見せた」と日経と足並みを揃える形で報道した。
さらに日経は、東証の斉藤淳社長の定例記者会見での発言のうち「肝心のジャスダックが自分たちでやるんだと繰り返し主張している。第3者が力で、べき論でやってもうまくいかない面がある」と述べた点にスポットを当てて、ここに新興市場の再編問題の混迷が極まったと印象付けた。