
設立後約2年で少なくとも19社の中小企業を買収したマイスホールディングスは、買収した子会社から資金を抜き取り、それを原資にM&Aを繰り返していた。現在同社は、元子会社から不正に資金を引き抜いたとして提訴されるなど、トラブルの渦中にある。そんな同社のM&Aには、大手M&A仲介会社3社が深く関与しており、トラブルの責任が問われかねない状況だ。特集『M&A仲介 ダークサイド』の#15では、M&A支援機関協会の代表理事で、業界トップの日本M&Aセンターホールディングス社長である三宅卓氏に、見解を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
M&Aトラブルを起こしたマイス社
関与したM&A仲介会社の責任は?
マイスホールディングスは2023年3月に設立後、わずか約2年間で19社以上の中小企業を買収してきた“ストロングバイヤー”として有名な存在だった。ところが、不正に会社資金を抜き取られたとして元子会社から提訴された他、買収した子会社やその取引金融機関との間で、複数のトラブルを抱えていることが判明した(詳細は本特集#10『M&A仲介業界が再び戦慄!中小企業を少なくとも19社買収したマイスホールディングスを元子会社が提訴、2社を引き合わせた大手M&A仲介会社とは?』参照)。
その状況に肝を冷やしているのが、同社のM&A戦略に仲介業務を提供するなど深く関与していたM&A仲介会社だ。マイス社の森秀幸社長によると、同社のM&Aに関与していた主な仲介会社は、12社の買収に仲介などで関与したM&A総合研究所、4件に関与した日本M&Aセンター、3件に関与したストライクの3社だ。
M&A仲介会社は、譲渡企業(売り手企業)と譲受企業(買い手企業)の間に立ち、M&A成立に向けて株式譲渡価格の交渉から法的手続きまでをサポートする。仲介会社はM&A成立によって、成功報酬として手数料を得るビジネスモデルだ。
マイス社の森社長はダイヤモンド編集部のインタビューで、トラブルの元凶となった買収した子会社から吸い上げた資金で次々と企業を買収するスキームは、M&A仲介会社が手数料を得るために提案したものだと証言。さらに、連続してM&Aを行ったものの、それはマイス社の理念とは懸け離れたものだったとも語っている。その上で、M&A仲介会社の提案したスキームに乗った自らの非を認めつつ、売り手企業やその取引先などを巻き込んだトラブルに発展した責任の一端は、M&A仲介会社にもあるのではないかと主張している(詳細は本特集#14『M&Aトラブルで訴えられたマイスHD社長が驚愕証言!福祉事業をやっていた当社を都合よく利用した「大手M&A仲介3社」の所業』参照)。
一方で、M&A仲介業界の自主規制団体であるM&A支援機関協会は、問題を引き起こす不適切な買い手企業を撲滅するために24年10月から運用を開始した「特定事業者リスト」に、マイス社を登録すべく検討を開始。実際25年6月25日、マイス社側に特定事業者リストに登録することを通知し、「弁明の機会付与通知書」を送付した。
M&A仲介会社の責任も指摘される中で、一連のトラブルをM&A支援機関協会はどう捉えているのか。同協会の代表理事で、日本M&Aセンターホールディングス社長でもある三宅卓氏を直撃した。三宅代表理事からは、マイス社の森社長の一部主張を真っ向から否定する発言も飛び出した。次ページでインタビューをお届けする。