M&A仲介 ダークサイド#14Photo by Satoru Oka

2023年3月に設立して以来、少なくとも19社を買収してきたマイスホールディングスは、元子会社であるトミス建設から会社資金を不正に引き抜かれたとして訴訟を提起されるなど、トラブルを起こしている。同社のM&Aには大手仲介会社のM&A総合研究所が深く関与していたことが判明。24年5月以降、事業承継を目的としたM&Aにおいて、買収した会社から資金を引き抜く悪質な買い手企業の存在が社会問題となっており、M&A仲介業界も神経を尖らせている。そんな中、渦中のマイスホールディングス森秀幸社長がインタビューに応じた。特集『M&A仲介 ダークサイド』の#14では、トラブルの背景にある前提を覆す、驚愕の証言をお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

トミス建設からの送金に不正はない
マイス社森社長が真っ向から反論!

――元子会社のトミス建設から訴訟を提起されています。これについて、森社長はどう捉えていますか。(詳しい経緯は本連載#10『M&A仲介業界が再び戦慄!中小企業を少なくとも19社買収したマイスホールディングスを元子会社が提訴、2社を引き合わせた大手M&A仲介会社とは?』参照)

 トミス建設については、2024年12月に建築関連の企業に売却しています。トミス建設の佐藤敏行社長と売却先の企業は、石川県の復興事業を行っていくことで、話が盛り上がっていたと記憶しています。そこで、私はその建築関係の企業へ株式譲渡をしましたが、その後は何の連絡もなく、両者でうまく事業をやっていると思っていた中で、訴訟が提起されました。

――その訴状には、マイスホールディングスがその建築会社にトミス建設を売却する前の話が主に書いてあります。会社の資金がマイス社などに不正に送金されているとの主張については。

 今後、裁判所に提出させていただきますが、送金は全て業務委託契約などの契約に基づいたもので、不正に出金したことはありません。

――トミス建設の佐藤社長は、取締役会の決議や金銭を貸し付ける契約などはないと証言しています。

 トミス建設は不正に送金されたと言っていますが、全て契約書があります。これに関しては、裁判の中で明らかにしていきます。

 先ほど言ったように、トミス建設は24年12月に建築関連の企業へ売却しました。その後、トミス建設の佐藤社長は同社の社長に復帰するのですが、その際、会社登記の違法性について、売却先の建築関連の企業から疑義が示されています。

 現時点で私の口から詳しくは伝えられませんが、こうしたことも踏まえて、裁判で伝えていきたいと思っています。

――なぜ送金を行ったのですか。トミス建設はそれが主な原因で資金ショートに陥り、信用が毀損されました。

 それをお答えする前に、そもそもマイス社がなぜM&Aをしていたかという話をさせてください。

 マイス社は短期間で、多数の中小企業を買収する”ストロングバイヤー”として、M&A仲介業界では有名な存在だった。訴訟となった元子会社のトミス建設とのM&Aでは、大手仲介会社のM&A総合研究所が深く関与しており、裁判所の判断次第ではM&A総合研究所にも火の粉が降りかかることになりそうだ。故にM&A仲介業界は、トミス建設とマイス社の訴訟の行方と、マイス社の動向から目が離せない状況だ。

 そんな状況で行われたマイス社の森社長へのインタビューは、合計2時間に及んだ。話の焦点は、トミス建設との訴訟から、同社のM&A戦略と経緯、そこに深く関与してきたM&A仲介会社へと移っていく。それは、これまで語られることがなかった、M&A仲介会社の本性が垣間見えるものだった。M&A仲介会社が抱えるダークサイドの核心ともいうべき森社長の証言を、次ページで余すところなくお届けする。