新聞やTV、インターネットのニュースで、企業の赤字決算の報道が相次いでいます。昨年度の連結決算で2兆2703億円もの営業利益を計上したトヨタ自動車が、今期は営業赤字が4000億円を超える見込みになったのをはじめとして、これまで日本経済の牽引役であった自動車産業、電機産業が軒並み赤字決算となる見込みです。
銀行の決算もサブプライムローンの影響に加え、企業業績の悪化による株価低迷などで、大幅に悪化しています。もちろん「経済情勢が悪いのに、銀行が儲かる」となってはおかしいのですが、これでは「銀行が社会に生かされている」ってことになってしまいます。
金融機能を司る銀行は、本来は経済の潤滑油となるべき存在で、日本経済の道筋を示すことが期待されていると思うのです。いつまでも銀行が受け身のままだと、「経済情勢に銀行の業績が左右される」という構図は断ち切れないままです。
これまで銀行が受け身であっても、日本経済が何とかやって来られたのは、自動車産業や電機産業に代表される、日本の製造業の国際的プレゼンスが高かったためだと言えます。しかし、「特定の産業に経済を牽引して貰う」という構造は、グローバル資本主義経済が進む現在、一国の経済システムとしてはあまりにも脆弱だと言わざるを得ません。
この現状を打破する為に、銀行が本来的な機能を発揮するよう積極的に動いていくべきではと考えている折、「いよいよ動き出すかも知れない」そんな胎動を感じさせる地方銀行の取り組みを耳にしました。今回は期待を込めて、その取り組みを紹介したいと思います。
「日本の森を守る
地方銀行有志の会」とは?
皆さんは、「日本の森を守る地方銀行有志の会」という会の存在はご存知でしょうか? 「日本の森を守る地方銀行有志の会」は、昨年7月に地方銀行の有志8行の参加により発足し、今では32行が参加する規模にまで発展している地方銀行の私的な集まりです(平成21年2月7日現在)。
いま、日本の森林で問題になっているのは、戦後大量に植林された人工林の過密化です。木々の成長とともに過密化が進むと、隣接する木同士が互いの成長を阻害し、背丈は伸びるものの幹が細いままになってしまいます。また、木々が密集するがために、太陽の光が地面に届かず、土壌にも十分な養分が行き渡らなくなります。
その結果、暴風や豪雨にもろくなり、自然災害を引き起こす原因にもなっているのです。この会は、こうした状況を何としなければ、ということで発足しました。
でも、これは単なるCSR活動ではないのです。
森林はビジネスチャンスの宝庫
日本は森林が国土の68.9%を占める、まさに森林大国です。森林大国といわれるカナダでも、森林の比率は45.3%と言いますから、いかに日本が森林資源に恵まれているかがわかると思います。
この森林という資源(リソース)に、あらためて目を向けてみると、化石燃料に代わるエネルギー源としての利用や、バイオテクノロジーを活用したR&Dに繋がる可能性など、ビジネスの芽がたくさん存在しており、実は新たなイノベーションを創造し得る“ビジネスチャンスの宝庫”なのです。
いっぽうで、地方銀行の業績は地方の経済状況に左右されます。そうであれば逆に、地方に偏在するこの“森林”というリソースを最大限に活用し地域経済の活性化に繋げることが出来れば、地域経済も潤い、その結果銀行の業績自体も好転する、という好循環を生み出すことが出来るのです。まさに地方銀行の役割の本質と言えます。
日本は戦後、工業化に邁進する一方で、豊富に存在する自国の森林の資源としての価値に目を向けることは少なかったと思います。森林は「ただ存在しているだけ」で、資源としての有効活用が進まなければ、当然管理も疎かになり、結果として“森林の荒廃”が進むことになります。
こうした状況を見かねて、各地でNPOやボランティアの方々が、成長に伴って密集した立木を一部抜き伐る“間伐”などの活動をされています。