【第19回】 2009年02月19日
なぜ彼はいつも作業着なのか
時おり金正日のことを思う。今ごろ何をしているのだろうかと考える。……などと書き出すとおかしな奴だと思われるだろうか。そういえば以前、
「国土は不可侵という思い込みから始まるから、領土問題ってどうしても膠着してしまう。竹島や尖閣諸島など、何かと交換条件に譲渡してしまってもいいのではないか」
と新聞の対談で発言したときは、ネットで「非国民の森達也は金正日の手先だ」とか「早く北へ帰れ」などと書かれたことがある。竹島の領有で揉めている相手国は韓国だし、尖閣は中国だ。今のところ日本は北朝鮮とは領土問題では揉めていない。まあたぶんこんな書き込みをする人たちにとって諸外国は、同盟国と仮想敵国の2つしかないのだろう。要するにブッシュ式の「敵か味方」か。そして仮想敵国と言えば北朝鮮。回路としては矛盾していないのだろうな。
とにかく時おり金正日のことを考える。でっぷりと太った体躯。度の強そうな眼鏡。髪は猫っ毛で天然パーマ。テレビなどで彼の映像を見るたびに、藤子不二雄の漫画「オバケのQ太郎」に登場した小池さんを思い出す。年齢的にもきっと金正日と小池さんは近い。あの調子で大好物のラーメンを食べ続けていたならば、今ごろはまさしくあんな体躯になっているだろう。そういえば小池さんも、いつもしかめっ面で何となくヒステリックだった。部屋でラーメンを食べているときに騒動に巻き込まれてよく怒っていた。
もっともこのイメージについては、あまり決めつけないほうがよい。日本のテレビで観る金正日の映像は、何やら怒ったり怒鳴ったりしている映像が多い。だからといって、彼が普段から怒ったり怒鳴ったりすることが多いと考えることは早計だ。テレビはイメージに合った映像を抽出し、それを繰り返し提供する。金正日については、短気で傲慢で独善的な男だとのイメージがある。言い換えれば視聴者がそんなイメージを求めている。そうなるとテレビはこれに合わせる。このイメージに合わない映像をダーウィニズム的に淘汰してしまう。
市場のニーズが
イメージを作り出す
数年前の北朝鮮脅威論がいちばんピークのころ、テレビ番組でハングルの翻訳をよくやっていた知人が、「翻訳の方向性が変わってしまった」とこぼしたことがある。
「変わったってどんなふうに?」
「たとえば一般の住民が金正日について語るとき、普通に『首領さま』と言っているのに『偉大なる首領さまである金正日同士』にしてくれとか、『決められたことだから仕方がない』と言っているのに『わが国のためだから当然だ』にしてくれとか、とにかく攻撃的なコメントに加工されるんだ」
「でもハングルをわかる人は日本にだってたくさんいるのに」
「だからボイス・オーバー(吹き替え)だよ。もとの音はアフレコでつぶして消してしまう」
Special Topics
バックナンバー
新着トピックス
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6)
- 日本を元気にする企業の条件
- ホンダ、ヤマハ発、味の素、住友化学… 日本企業にもあるBOP市場開拓のネタ
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- 市民による市長リコールもまだできない 阿久根市政“大混乱”の責任は誰にある?
- News&Analysis
- 苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- “不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS
- 金融市場異論百出
- 超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
- 『社会貢献』を買う人たち
- キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 対等合併の呪

- 岡野工業・岡野代表エッセイ
- “神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!

- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
著者プロフィール
- 森達也
(テレビディレクター、映画監督、作家)
1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー 映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。
この連載について
テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!
アクセスランキング
- 2位
- 週刊・上杉隆
- 元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
- 3位
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 4位
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 5位
- 評価が上がる!上司を味方にする技術
- 上司に好かれる話の聴き方、嫌われない質問の方法
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 山崎元のマルチスコープ
- 官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
- SPORTS セカンド・オピニオン
- 大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

- 【PrimeTime】トップインタビュー
- 「サービス力は人財力と組織力の掛け算」~百瀬次生・日立電子サービス社長

- 【THEProject】プロダクトとサービス最前線
- 現実味帯びる「IFRS」。最新会計基準対応処理システムを低コストで提供
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。




