【第29回】 2009年11月17日
厳しく批判された「お言葉」発言。
でも何かが引っかかる
10月23日の閣議後に行われた閣僚懇談会で岡田克也外相は、国会開会式での天皇陛下の「お言葉」について、「大きな災害があった直後を除き、(ずっと)同じ挨拶をいただいている」と述べたうえで、「陛下の思いが少しは入った言葉がいただけるような工夫を考えてほしい」と宮内庁に検討を求めた。
岡田外相のこの発言に対して、同じ民主党の西岡武夫参院議院運営委員長は同日、「天皇陛下の政治的中立性を考えれば、開会式における陛下のお言葉について、私どもが政治的にあれこれ言うことは、あってはならない。信じがたい」と強い調子で批判し、自民党の大島理森幹事長も、「政府が陛下のお言葉にものを申し上げるのは、憲法上も、政治論としても行き過ぎた発言だ。民主党のおごりを感じる」と自民党本部で記者団に語っている。
批判は政治家からだけではない。メディアや識者などからも、岡田発言に対しての批判の声は多い。たとえば産経新聞はそのコラムで、「閣僚として不適切な発言ではないか」「これまでのお言葉に問題があったかのような意味も込められ、少し礼を欠いている」などと厳しく指弾しながら、「ときの情勢などに応じて違った工夫を加えられたお言葉が政治性を帯びないという保証はない」と結んでいる。
新しい歴史教科書を作る会の有力メンバーである八木秀次高崎経済大学教授は、「岡田氏の発言を要約すると天皇陛下に『お言葉のあり方を考えてほしい』と言っているに等しい。陛下は政治的、党派的な発言をなさらぬよう心がけておられる。国会開会式も諸々の事情を踏まえてあのようなご発言になっている。岡田氏の発言はそうした事情を十分に斟酌しない、非常に不遜な発言に思える」と指摘したうえで、「仮に岡田氏の発言を踏まえて陛下がお言葉を変更されたとしたら強い違和感を覚える」と語り(産経新聞)、また政治評論家である有馬晴海も、「天皇陛下は政治的に独立していて、政治に介入しないのが大原則。それなのに国会議員、まして閣僚が天皇陛下の言動に触れるのは暴走だ」と岡田を強く批判している(サンスポ)。
天皇のお言葉に異議を唱えるのは政治的干渉!?
……ここまで書きながらふと気がついたけれど、やはりこうした問題になると、産経新聞やサンケイスポーツなどの独壇場だ。ほとんど独走状態。
資料を読みながら、もうひとつ気づいたことがある。今回の騒動も含めて天皇や皇室についての記述は、なぜか文脈がわかりづらく、意味を理解するためには、何度も読み返さなければならない場合が少なくない。時として敬語の使い方が過剰になりすぎて、意味が二重三重に捩れてしまうからだろう。
いずれにせよ岡田外相の発言に対してのメディアや識者の反応は、批判か黙殺がほとんどのようだ。賛同は(僕の調べた範囲では)見つからない。
天皇は政治的な存在ではない。あるいは、天皇を政治的に利用すべきではない。
それはもっともだ。この原則に文句をつけるつもりはない。でも何かが引っかかる。だからもう少し考えたい。
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著者プロフィール
- 森達也
(テレビディレクター、映画監督、作家)
1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー 映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。
この連載について
テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!
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