広辞苑によれば、「腐敗」とは「精神が堕落して、弊害が生じる状態になること」です。
労働組合のそもそもの精神とは、「資本家による搾取に対抗し、一致団結して労働者として最低限の雇用条件を獲得すること」。現在の労働組合は、正しくこの「精神が堕落して、弊害が生じる状態」に陥っています。
今週号の特集「労働組合の腐敗」では、多角的な視点から「腐敗」の実態を浮き彫りにしました。
たとえば、非正規雇用の問題。いまや全労働者の3分の1が非正規雇用であり、そのなかには生活保護水準にも満たない賃金で働くワーキングプアが1000万人以上もいるといわれます。まさに労働組合が守らなければならない人々です。
しかし、企業別組合が主体の日本の労組は正社員のためにあって、非正規労働者に救いの手をさしのべようとはしません。企業別組合が主体の日本では、すでに労組も(自分さえよければいいという)「ミーイズム」に毒されています。
かつての三井三池炭鉱争議には業種・地域の壁を超えて全国の労組が共闘にかけつけましたが、それも今は昔の話になってしまいました。
それでいて、労使協調というなれ合いのもとに闘うことをやめた労組は巨額のストライキ資金を貯め込んでいます。ストライキはピーク時の100分の1に減っているのに、組合費は引き下げられません。
それどころか組合費とは別途、スト積み立て資金を徴収している労組がいまだにあるくらいで、お金だけは雪だるまのようにふくらんでいくのです。
ちなみに、民間最大級のNTT労組のスト資金は548億円!。年1%で運用したとして、これだけで眠っていても6億円近い収入が転がり込んでくる計算です。
組合員から集めたお金を労組はどう使っているのでしょうか。最近、日本郵政グループ労組新宿支部で幹部の使い込みが発覚しました。焼肉、キャバクラ通いで500万円近い予算を文字通り食いつぶしたというのです。
同労組の中央執行部役員の年収は1人当たり平均2500万円!。三役クラスとなれば、それ以上です。「労働貴族」ぶりはまだまだ健在といえるでしょう。
問題は、そんな労組が民主党政権に強大な影響力を有していることです。労組ピラミッドの頂点に立つ「連合」(日本労働組合総連合会)は180万の得票力を誇り、民主党の全衆参議員417人のうち54人が連合組織内議員です。
さらに付け加えれば、鳩山内閣の全閣僚18人のうち7人が連合組織内候補。労組のカネ、選挙協力なくして、政権交代はなかったといっても過言ではありません。
少なくとも来年の参院選まで民主党と労組の蜜月関係は続きます。民主党が労組におもねるあまり、納税者の利益を損なうようなことはあってはならない。
そんな問題意識で本特集に取り組み、連合・古賀伸明会長にも持論・反論を聞きました。日本の50大労組ランキング&図解を含めて、労働組合の実情・問題点がこれ1冊でわかります。ご一読いただければ幸い至極です。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 藤井 一)