国際収支統計や貿易統計は、日本の輸出が猛烈な落ち込みのフェイズに突入したことを示している。財務省が1月13日に発表した国際収支速報によると、11月の輸出は対前年同月比で26.5%の減少になった。実質ベースで見て輸出はGDPのほぼ15%を占めているので、この減少傾向が1年間続けば、それだけでGDPは4%近く減少してしまうことになる。

 実際には、設備投資の減少や所得の減少による消費減の影響も加わるので、GDPの落ち込みはもっと大きくなる。08年12月の工作機械受注額が前年同月比71.9%の減少という驚くべき値を示したことを見ても、設備投資の落ち込みは相当な規模になると推測される。したがって、これからの日本経済は、きわめて深刻な有効需要の落ち込みに直面することになる。

 なお、輸入が減少(対前年同月比13.7%の減)したにもかかわらず輸出がそれより激しく落ち込んだため、国際収支統計における貿易収支は934億円の赤字となった。この結果、経常収支の黒字は前年同月比で65.9%減少した。

 貿易収支の赤字は、昨年の8月から(9月を除けば)継続して赤字になっている。今後輸出の大幅な増加は見込めないため、貿易収支の赤字はもはや定着してしまったと考えることができる。つまり、製造業をベースにした「ものづくり輸出立国」の時代は、終焉したのである。

 今後の日本の経常収支は、所得収支における黒字で支えられることになる(11月の所得収支は、8447億円の黒字である)。だから、対外資産の運用をいかに効率的に行なうかが、今後の日本にとってきわめて重要な課題になる。

今後の輸出は
どう推移するか?

 ところで、輸出の減少は今後も続くのであろうか? それをみるために貿易統計における輸出総額、対米輸出、対中輸出の推移を見よう(【表1】と【図1】を参照)。これを見ると、08年11月に、驚くべき変化が生じていることがわかる。

 すなわち、輸出総額は、08年6月を除けば、9月までは前年同月比でプラスの伸びであったが、10月からマイナスに転じ、11月には前年比26.7%というきわめて大きな落ち込みを示した。対米輸出は、07年9月以降、前年同月比がマイナスになっているが、08年11月には前年同月比で実に33.8%もの減少になっている。対中国輸出は、前年同月比で10月から減少が始まったが、11月には24.5%もの落ち込みになっている。このように、11月の貿易統計で見る日本の輸出は、まさに「崩壊」としか形容のしようがない状況だ。

【表1】輸出の前年同月比伸び率(単位:%)
輸出の前年同月比伸び率
【図1】日本の輸出額の推移(月額、単位:兆円)
日本の輸出額の推移