中国で一旗挙げようと進出する日本企業は多いが、中国はそう甘い市場ではない。戦略の巧拙いかんによって、中国市場が「宝島」にも「蜃気楼」にもなり得ることは、前回も指摘した通りだ。今回は、中国進出を目指す日系アパレルブランドの戦略を探ってみよう。上海を代表する高級百貨店・久光百貨店でアパレルフロアの責任者を務める永井竜司部長に、中国市場での成功の秘訣を聞いた。

上海久光百貨店のアパレル責任者・永井竜司部長は、日本のアパレルブランドが中国で勝ち残るための厳しさを語る。

――永井部長の現在の業務内容を教えてください。

 Lifestyle International Holding Limited(香港SOGO)と上海ローカル資本の合弁として2004年に開店した上海久光百貨店で働いています。店舗は、ちょうど地下鉄「静安寺」駅の真上にあります。

 久光は、後発ながら上海で最も高級な百貨店としてのポジションを確立しています。上海の百貨店の中で売り上げは第3位(08年に16.5億元)、毎年20%以上成長している唯一の百貨店です。

 高価格の商材にフォーカスしていますので、必然的に欧米ブランド品が多く、日系ブランドは20%程度(ヤング売場は30%程度)です。客単価及び購買率がアジアでトップクラスの百貨店です。

 その久光で私がやっているのは、4F(ヤング・婦人服)、5F(紳士服)、6F(子供服・スポーツ)の販売責任者です。

――後発の久光百貨店が、上海でなぜこれほど躍進できたのでしょうか?

 「初モノ」にこだわったとことが、勝因だと思います。デザイン、店舗イメージなどが、これまで上海になかったものにフォーカスして出店しています。

 特に中国では、他店と同じ商品で勝負すると、必ず熾烈な価格競争が起こり、利益をすり減らす「消耗戦」に陥ってしまいます。その価格競争に巻き込まれないためには、違う土俵で戦う必要があります。

 上海にまだ上陸していない上海初のブランドや商品を導入すれば、価格競争に巻き込まれることはありません。