突然の怒鳴りたい衝動の後、落ち込む
軽いうつだと思っていたら
若年性アルツハイマーと診断されたEさん(57歳)のケース
突然、会議室で立ちあがり
怒鳴りたい衝動にかられる
リーマンショック以降、長引く不景気と会社からのプレッシャーで、ストレスがたまっているせいだとEさんは思っていた。入社以来30年以上家族とも言い争いなどしたことなどないにも関わらず、会議で役員から数字の未達を指摘された瞬間に、自分のなかで何かがはじけた。立ちあがって「うるさい!」と怒鳴りたい衝動をやっと抑えた。
Eさんのその時、自分が自分でない何かに一瞬乗っ取られる感覚、脳のザワザワ感をはじめて感じた。その高揚感のあと「一体自分はどうしてしまったのだろう?」と激しく落ち込んだ。
50歳を過ぎたあたりから感じるようになった疲労感が、55歳を過ぎてからはっきりとカタチになってきた。月曜日から金曜日まで、電車に乗って通勤をするのが精一杯で、休日はダラダラと抜け殻のように過ごすようになった。イライラも疲れのせいだと思っていたが、どうもおかしい。まずは、全身をきちんと検査をするために、人間ドックを受けてみようとそのとき決心した。
人間ドックを受診
脳ドックで脳の萎縮を指摘される
会社の近くの病院で人間ドックを受けた。50歳を過ぎたら一度受けたほうがよいと医師に勧められて脳ドックもオプションにつけた。頭を固定され、MRIの装置に横たわりながら、漠然とした不安に襲われた。
人間ドック終了後、医師から意外な言葉が告げられた。「Eさん。年齢より進んだ脳の萎縮が見られます。紹介状を書きますから1度専門医を受診してください。最近何か変わったことはありますか?」
そこで、会議室で起こったことを医師に告げようと思った。しかし言葉が出てこない。
あの日のことを再現したいのに、あの役員の顔は浮かぶが名前も出てこない。そして現状も告げられない。「何かがおかしい」とはっきりと確信した。最近の痩せ方からみて、自分は「うつ気味」だと思っていた。しかし脳の萎縮を指摘されるとは思ってもみなかった。