孤独な女性ほどテレビ視聴時間が増え、座りっぱなしが健康リスクに…英国の研究よりPhoto:123RF

 近年、「孤独」が世界的な公衆衛生上のリスクとして注目されている。

 日本でも2021年2月に孤独・孤立対策担当大臣を置いたのに続き、23年5月に孤独・孤立対策推進法が成立。さまざまな議論が行われている。

 客観的な「孤立」と主観的な「孤独」は必ずしもワンセットというわけではない。社会的なつながりがほとんどなくても、日々の暮らしに充足していれば孤独を感じないかもしれない。逆に、家族や友人、知人に恵まれていても、孤独感がつきまとう人はいるだろう。一つだけ確かなのは、社会的な孤立も、個人的な孤独感も、健康リスクを助長する可能性が高いことだ。

 世界で初めて孤独担当大臣を置いた英国では中高年の孤独感と、同じく健康リスクとして知られている「座位時間(座りっぱなしの時間)」との相互関係に注目。50歳以上の英国人を対象とする「英国加齢縦断研究」の参加者(男性3123人、女性3722人)に3回のアンケートを実施し、平日と週末のテレビ視聴時間と孤独感との関係を調査した。

 その結果、男女ともに孤独感とテレビの視聴時間との間に有意な正の関係が認められた。つまり、テレビを観る時間が多い人ほど、孤独を感じていることになる。

 次に「テレビを長時間観るから孤独なのか、孤独だからテレビを長時間、観るのか」を解析したところ、女性でのみ、孤独感の強さがテレビの視聴時間と関係していることが判明した。

 自己申告制なので、男性回答者に特有の孤独を認めたくない「やせ我慢」が影響した可能性はあるが、研究者は「孤独感が強い中高年の女性ほど、長時間テレビを観て過ごす時間が増えてしまうようだ」と指摘している。

 孤独・孤立の生活パターンは身体活動量を減らしやすい。その結果、メンタルヘルスや肥満、心血管疾患といった疾病リスクが上昇する。また中高年期の孤立は、将来の認知症リスクでもある。日本では年間およそ2万人の高齢者が、孤独・孤立状態にあることで早死にするという推計があるほどだ。

 男女を問わず社会的役割の変化に直面する中高年期こそ、新たなネットワークをつくり、孤独・孤立に陥らない意識が必要なのかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)