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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

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「国体は廃止すべきだ」――開催地・新潟から上がった国体批判

 今年の「国民体育大会」(以下、国体)開催地は新潟県である。すでにスキー、スケート、アイスホッケー3競技の冬季大会(2月17日から20日までの4日間)を終えており、9月に本大会を迎える。

 メディアをはじめ一般の人々にいたるまでほとんど関心を示さなかった冬季大会で、新潟県はスキーで男女総合1位、女子総合2位、3競技総合得点で男女総合4位、女子総合6位など上位の成績を収めた。冬季大会の得点と本大会の得点を合わせて総合優勝が決まる。

国体批判のきっかけとなった
泉田新潟県知事の発言

 冬季大会に合わせるように長年にわたり新潟でスポーツ指導者として活動してきたある人物が、「国体は税金の無駄遣いであり、有害だ」と厳しい批判の声を上げた。

 現地に赴き、その人物から直接話を聞いた。

 国体批判の主は、40年間にわたって新潟県で体操の指導に当たってきた畠野毅さん(67歳)である。畠野さんは、オリンピック金メダリスト・加藤澤男など有力選手を育てる一方で、県体操協会理事長や新潟市体操協会会長(現在、顧問)を歴任し、新潟の体操界に多大な貢献をしてきた。

 その畠野さんが国体批判をぶち上げたきっかけは、泉田裕彦・新潟県知事の議会発言だったという。

 「泉田知事は、国体開催県としてなにがなんでも天皇杯(男女総合優勝)を取る、とはいわず、スポーツ振興につながることこそ大切だと主張した。それは私の考えてきたことでもあり、この際、私の長年の経験を踏まえて、国体がスポーツ振興には何の役にも立たないどころか有害でさえあることを明らかにしようと思ったんです」

 昨年2月の定例議会で、「なぜ、知事は来年の国体で総合優勝を目指そうとおっしゃらないのでしょうか」とのある議員の質問に、泉田知事は次のように答えた。

 「この国体ですが、結果、順位がすべてということではなく、国体に向けて競技力が向上していく一過性のものではなく、継続的に本県のスポーツの進展がなされる、そういう社会づくりを進めていくことが重要だと思っています。スポーツをするなら新潟県でという環境づくりにつながることも重要だと考えております」

 総合優勝にこだわらない泉田知事に対する畠野さんの共感には、過去の“忌まわしい記憶”が鮮明に残っていたこともあった。

開催県総合優勝の先鞭をつけた
45年前の悪夢

 1964年に国体を開催した新潟県は、総合優勝を果たしたものの、その無節操なやりかたに厳しい批判が浴びせられた。

 「なぜ、新潟は勝ったか。巨額な選手強化費を投入して全国から優秀な選手をスカウトし、大量の体育教員を採用し、高校に特訓のノルマを与えるなど、普通のスポーツの常識では考えられないような過激な強化策を強行したのがその原因である」(川本信正著「スポーツの現代史」大修館書店)

 当時、県体操協会の幹部だった畠野さんらは、天皇杯至上主義に批判的で県外選手を国体に参加させなかった。以後もその方針を貫いてきた。しかし、畠野さん引退後の現執行部は、方針を変え、今回、県外選手を出場させようとしている。

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著者プロフィール

谷口源太郎
(スポーツジャーナリスト)

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。

この連載について

底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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