今企業を訪れると、“巻き込み力”という言葉をよく耳にします。これは、リーダーに求められる能力に関するキーワードの1つになっています。
一口で言えば、「部門やプロジェクトをうまく推進するために、メンバーを巻き込む」ことです。“個”から“チーム”へという時代の流れの中で、その必要性が増しているのです。
企業では、リーダーの立場にある人に、研修への参加などを通じて「巻き込み力」の開発に熱心です。「人の話に聞く耳をもてるようにするため、コーチングの学習をする」などといった感じです。
確かに、リーダー役の人たちがそうした「巻き込み力」を身につけることは、組織にとって大変有益なことです。しかし、リーダーにだけその責任、つまりチームをうまく形成する責任を負わせてよいのでしょうか?
弱っているのは「巻き込み力」
ではなく「巻き込まれ力」のほう?
私は、今の職場において決定的に弱まっている力があると考えています。
それは、「巻き込み力」ではありません。かつてのリーダーたちが今のリーダーよりも巻き込み力に優れていたとは思えません。やはり苦労をしていました。この力は今のリーダーになって、急速に弱まった力ではないのです。
正社員、パート、派遣等雇用形態の多様化、中途入社、外国籍社員の増加、年功序列の崩壊による年上の部下の存在等、昔に比べて弱まったのではなく、難しくなっている力なのです。
では、何が決定的に弱まったのか。それは、「巻き込まれ力」です。
組織でやっていこうとする取り組みや、協力をして何かをやっていく取り組み、或いは新たな経験をする取り組み等に、メンバーが自分から積極的に巻き込まれていく力が弱まっているのです。