2007年、5年連続の2ケタ成長を記録した中国経済。牽引役となっているのが、GDPの4割強を占める“民営経済”だ。昨年6月末時点で、民営企業は550万社を突破。全企業数に占める割合も8割を超えた。いまや民営企業の実態を知らずして、中国経済の将来は語れない。中国における産業分析の第一人者である黄泰岩・中国人民大学教授に、民営企業の可能性と課題を聞いた。
黄泰岩 中国人民大学教授 |
週刊ダイヤモンド(以下、DW):中国の“民営経済”の現状をどう評価していますか。
黄泰岩(以下、黄):民営企業の地位は確実に向上しているが、手放しで喜べる状況にはまだ至っていないというのが私の見立てです。
表面上は耳に心地の良い統計数字が多い。例を挙げれば、民営企業の数はすでに550万社を超えました。これは、(中国共産党が民営企業重視の路線を強く打ち出した)2002年と比較して2倍以上の規模です。中国上位500社に占める割合も2003年の3.8%(19社)から07年には17.8%(89社、見込み)に上昇。2006年度統計によると、GDPに占める民営経済の割合は45%に達しています(外資経済を除く)。
ただし、一方で、これまでに世界上位500社に入った中国の民営企業は皆無です。国営企業を含めても、その数は非常に少ない。2006年、中国上位500社の資産規模は41兆元強であり、世界上位500社の7.1%足らず。利益総額でも6.6%にすぎません。これこそが世界から見た中国企業の競争力の実像なのです。
DW:しかし、なかには、華為技術(ホワウェイテクノロジー)のように、“世界のシスコ”を敵に回し、インターネット通信機器市場で躍進を続ける民営企業も出始めています。
黄:ホワウェイは確かに前途有望な企業です。そのほかにも、中国民生銀行や江蘇沙鋼(鉄鋼)、国美電器(家電量販)など、成功した企業は少なくありません。ただ、現実には中国の民営企業の多くは“自己自営”にとどまっています。