【第20回】 2008年02月19日
日経平均株価の適正水準を計算する
最近、株価の動きが大きい。毎日の動きには理由があり、投資家は、この理由、市場用語で言うところの「材料」を先読みしようと必死になるが、それだけでは不十分だし、くたびれる。こうしたときには、株価の水準自体の高安を考えるといい。たとえば日経平均の適正水準を計算してみよう。
以下の方法は、いくつかの強い仮定に基づくものであり、唯一の正しい適正株価計算法だと主張できるものではないが、市場の動きを解釈するうえでも使えると思う。前提条件の説明は後回しで、具体的な数字を一度計算してみよう。データは2008年1月29日の日本経済新聞だけだ。電卓がお手元にあれば、一緒に計算してみてほしい。
まず、日経平均の一株利益を計算する。前日の終値1万3087円(以下、日経平均は端数を切り捨てる)を今期予想PER(株価収益率)の14.40倍で割り算すると908.8円が日経平均の一株利益だ。ちなみに、この数字は、年初の930円程度から徐々に低下しており、これは不安材料だ。次に、長期国債利回り1.405%にリスクプレミアム6%を加えた7.405%から、予想名目GDP成長率を2%として差し引き、リスクプレミアム6%に対応する益利回りを求めると5.405%だ。益利回りはPERの逆数なので、0.05405で1を割ると、PERは18.50倍と計算され、これと908.8円を掛け合わせると、1万6812円が現在の日経平均適正水準の推定値になる。ちなみに年末の日経平均を予想するときは、一株利益を成長率で伸ばし、配当を差し引く。
ここでは、日経平均の利益が一定率で成長することと、その成長率が名目GDPの成長率で代理されることを仮定している。実際の成長率は企業の利益もGDPも凸凹するし、長期を見通せるものではないが、「イメージとしておおむね一致していると投資家が考えたら」という仮定で計算してみた。
2%という成長率は、2008年度の政府見通し(実質2.0%、名目2.1%)にほぼ近い。「政府見通しの成長が達成されると信じるなら、日経平均は1万7000円近くでいい」ということになるが、目下の株価は投資家がもっと悲観的であることを示唆している。
成長率が1%下がるとどうなるか。先ほどと同様に計算すると、必要益利回りは6.405%で、PERは15.61倍、日経平均は1万4186円だ。さらに成長率を下げて、ゼロ成長にすると、PERは13.50倍となり、日経平均は1万2268円だ。投資家は、今のところ、ゼロ成長まで悲観的ではないということか。
リスクプレミアムは、投資家が株式のリスクを負担するに際して要求する追加的な利回りだが「6%が標準、5%なら株価が高い、7%なら株価が安い」というくらいに筆者は考えている。年金積立金運用管理独立行政法人が昨年行なった調査では日本以外の主な先進国の過去30数年の株価の平均的なリスクプレミアムは6%強だったという。この近辺が相場かとは思うが、サブプライム問題に投資家が警戒的な現在、6%よりも少し大きな数字が要求されている可能性はある。
リスクプレミアムの縮小はただちに株価の上昇だ。投資家の恐怖が昂じてリスクプレミアムが拡大し、かつ成長率予想が過度に悲観的なときが大きな投資のチャンスだ。それをいつと判断するかは読者次第だが、なんらかの株価レベルの計算は必要だ。それにしても、日本の株価が「普通に」計算できるようになったことは感慨深い。
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著者プロフィール
- 山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。
この連載について
12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。
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