銀行による住宅ローン獲得競争が激化する中、「団体信用生命保険(団信)」に3大疾病など補償を上乗せできる、「上乗せ団信」が増えている。しかし、あまりにも種類が多いためどれを選んだら良いのか分かりにくく、またよく考えずに選ぶと、むしろ家計を圧迫してしまう可能性すらある。そこでおすすめなのが、「上乗せ団信」の中でも、保険金の支払い条件によって保険料を抑えられ、さらに途中解約が可能な商品だ。
団体信用生命保険とは、借りた人が「死亡」したり、「指定された高度障害状態」になったりした場合に、その時点でのローン残高分が保険金として支払われ、その後の支払いが不要になる生命保険のこと。
住宅金融支援機構が提供する最長35年の固定金利住宅ローン「フラット35」は、2017年10月1日から団信保険料が金利に含まれるようになり、従来よりお得に借りられるようになった。「団信抜き」のフラット35も借りられるが、大半の人は「団信込み」のフラット35を借りている。
一方、民間の銀行の住宅ローンについても、借り入れの条件として団信への加入が定められていることが多く、保険料は金利に含まれているため、別途支払う必要はない。
一方で最近は、どの民間銀行も「上乗せ団信」の開発を強化している。住宅ローンの金利引き下げ競争は限界に近づいており、差別化を図ることによって収益を増やそうとしているためだ。例えば「3大疾病保障」は、通常の団信(無料)に、補償を上乗せすることができる。ガン、急性心筋梗塞、脳卒中という日本人の死因ベスト3の病気に罹った場合、その時点でのローン残高相当の保険金が、残ったローンの支払いに充当される。加入には一定の条件があるが、生前の万が一が気になる人にとっては、魅力的だろう。
「上乗せ団信」の保険金支払い条件は意外と厳しい
保険料が高く、途中解約ができないものもある
しかし、「上乗せ団信」には様々な注意点もある。
第一に、保険金が支払われる条件のハードルが意外に高いということだ。「3大疾病保障付団信」の多くは、ガン(悪性新生物)と診断されればすぐに保険金が支払われるが、初期のガンである「上皮内ガン等」は対象外となる。急性心筋梗塞や脳卒中は、発症しただけでは保険金は支払われず、60日以上働けなかったり、一定の症状が続いたりすることが条件となる。
第二に、保険料が高く、支払いがバカにならないということだ。「3大疾病保障付団信」の場合、通常の団信に年0.3%の金利を上乗せするというのが一般的だ。例えば3000万円の借入残高があるとすると、単純計算でその年だけで9万円も支払うことになる。
第三に、いったん加入すると、途中解約ができないものがあるということ。これは、保険料を金利に上乗せするためだ。途中でやめたらその分、金利を下げればいいように思うが、契約やシステムの関係で対応が難しいのが現状だ。
そこで、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんはこうアドバイスする。「疾病保障はつけないという選択肢ももちろんあります。もし、つけるのならば、私がおすすめしているのは、“当初は返済額分をカバーし、働けない状態が継続した段階でローン残高ゼロになる”タイプの保険です。さらに、“保険料を金利上乗せで支払うのではなくローン返済と別に月払いできる”タイプであることが望ましいです。いきなりローン残高がゼロになるわけではないため、その分保険料が安く、しかも金利上乗せではないので途中で外すこともできるからです」
みずほ銀行や三菱UFJ銀行の上乗せ団信なら
保険料が金利上乗せでないから、途中解約ができる
具体的には、みずほ銀行の「8大疾病保障」、「8大疾病保障プラス」や三菱UFJ銀行の「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」などがあてはまる。
みずほ銀行の「8大疾病保障」は、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾患のほか、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎という5つの生活習慣病を対象に、働けなくなった場合は最長1年間、毎月のローン返済が免除され、それでも同じ状況が続いていれば残債が一括して補償される。「入院など働けない状態が継続した後に、ローン残高がゼロになる」仕組みを取り入れているため、保険料が安くなるのだ。
保険料は借り手の年齢、住宅ローンの借入残高、毎月の支払額などで決まる。例えば、35歳で加入し借入金額2000万円、借入期間35年、金利1.5%、元利均等返済の場合、みずほ銀行の「8大疾病保障」なら初回の保険料は月額477円、5年後でも月額703円で、最も高くなる25年後でも月額1844円だ。
また、三菱UFJ銀行の「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」は、ガン・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾患のほか、高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変という4つの生活習慣病を補償する。「7大疾病保障付住宅ローン 安心の保険料タイプ(保険料支払型)」を、みずほ銀行と同様の条件でシミュレーションすると、初回の保険料は月額306円、5年後は月額646円で、最も高くなる25年後でも月額3904円だ。
| みずほ銀行と三菱UFJ銀行の「上乗せ団信」の特徴 | |||
| み ず ほ 銀 行 |
商品 | 保険料の払い方 | 途中解約 |
| (1)団体信用生命保険(死亡+高度障害) | 無料(金利に含む) | 不可 | |
| (2)3大疾病保障特約付き団体信用生命保険 <(1)の上乗せ商品> |
金利に上乗せ (+年0.3%) |
不可 | |
| (3)8大疾病保障/8大疾病保障プラス <(1)の上乗せ商品> |
返済と別に月477円~※ | 可 | |
| 三 菱 東 京 U F J 銀 行 |
商品 | 保険料の払い方 | 途中解約 |
| (1)団体信用生命保険(死亡+高度障害) | 無料(金利に含む) | 不可 | |
| (2)7大疾病保障付住宅ローン(金利上乗せ型) <(1)の上乗せ商品> |
金利に上乗せ (+年0.3%) |
不可 | |
| (3)7大疾病保障付住宅ローン(保険料支払い型) <(1)の上乗せ商品> |
返済と別に月306円~※ | 可 | |
| ※ 35歳加入、借入金額2000万円、借入期間35年、金利1.5%、元利均等返済の場合の初回保険料 | |||
どちらの商品も保険料の支払い方法は、金利上乗せではなく、ローン返済とは別に口座から引き落としするため、将来、貯蓄が増えたり、ローン残高が減ったりして、ローン返済に困るリスクが少なくなれば、途中解約することも自由だ。
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また、「全疾病保障」を無料で付帯しているのが、住信SBIネット銀行だ。女性には、がんと診断されると30万円が支給される保障も無料で付けている。じぶん銀行についても、がんと診断されると住宅ローン残高が半分になる「がん50%保障団信」が無料付帯している。こうした、無料で保険を付帯している銀行を選ぶのもいいだろう。
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上乗せ団信については、各銀行が様々な商品を投入しており、「加入しないといけない」と考えてしまうかもしれないが、家計の状況によっては疾病保障保険を付けないという選択もある。将来のリスクと、家計の状況を見比べた上で、「上乗せ団信」をうまく利用しよう。



