家や土地の売却には、さまざまな費用がかかる。仲介手数料、印紙税、司法書士報酬、測量費などだけでなく、時には税金も発生する。諸費用は、物件価格の3%~10%くらいかかると考えておいた方がいいだろう。そのことを計算に入れておかないと、予定より手元に残るお金が不足し、売却後のプランにも狂いが生じかねない。家やマンションなど不動産売却にかかる経費のポイントを押さえておこう。
家やマンションなど不動産の売却時には、大枠として下記の諸費用が発生する。このうち必ずかかるのは(1)の「仲介手数料」と(2)の「印紙税」で、それ以外は状況や売却の方針によって変わってくる。これらの諸費用を売却価格から差し引いた残金が、実際に手元に残るお金となる。
(1)仲介手数料
(2)印紙税
(3)抵当権抹消登記費用(およびローン完済費用)
(4)測量費
(5)ハウスクリーニング・補修費用
(6)インスペクション費用、瑕疵保険の検査料・保険料
(7)そのほか、売却前後にかかる費用・税金
それでは各費用について見ていこう。
(1)仲介手数料
売却を依頼した不動産会社への「成功報酬」が仲介手数料だ。成功報酬と記したとおり、売買契約が成立しない限り発生しない。不動産会社が支払う、検索サイトへの登録料やチラシへの掲載料、購入希望者の現地案内にかかわる費用など、基本的な販促費用はすべてここに含まれる。売主の依頼に基づいて行った広告等についてのみ、実費請求となるが、そういうケースはまれだ。
仲介手数料の上限額は、以下のように法律で定められている。
| ◆不動産売却の仲介手数料 | |
| 売却価格 | 仲介手数料 |
| 400万円超 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
| 200万円超、400万円以下 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
| 200万円以下 | 売却価格×5%+消費税 |
たとえば、4000万円で売却が成立した場合、4000万円×3%+6万円+消費税=約136万円が上限額となる。
上限とはいえ、ほとんどの不動産会社はこの枠めいっぱいの額を請求してくる。値引き交渉を行うとすれば、媒介契約を結ぶ前だが、強引に値引きに応じさせても、そのぶん他の面で不利益を被るようでは意味がない。よくあるのは、不動産会社が値引きした分を補填しようとして、「両手取引」を成立させようとするケースだ。
両手取引とは、売主・買主とも自社で見つけ、双方から仲介手数料を取るもの。それ自体は違法でないが、売主の承諾なく、他の不動産会社からの問い合わせを門前払いして売却が長期化したり、高く売れるはずの物件が安く売られたりする可能性が出てくる。
仮に両手取引に走らなかったとしても、不動産会社も商売のため、手数料を割り引かれた客に力を入れて営業するとは考えにくい。その結果、売却価格を下げることになっては意味がない。
前記したとおり、仲介手数料から基本的な販促費は捻出される。手数料の値引きも大切だが、それによって、販促費も減らされる恐れがあることを心得ておこう。
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(2)印紙税
売買契約書に貼付する印紙代のこと。収入印紙の金額は契約書の記載金額によって、下記のように定められている。
| ◆不動産譲渡の契約書にかかる主な印紙税額 | |
| 売却価格(契約書に記載の契約金額) | 印紙税額 |
| 1000万円超~5000万円以下 | 1万円 |
| 5000万円超~1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超~5億円以下 | 6万円 |
| ※上記金額は2020年3月31日まで | |
(3)抵当権抹消登記費用(およびローン完済費用)
家や土地に抵当権が設定されている場合、抵当権の抹消費用として、「不動産の個数×1000円」の登録免許税がかかる。たとえば、普通の一軒家の場合、不動産の個数は土地と建物の2つなので、合計2000円となる。
法務局に自力で申請したり、よりリーズナブルな司法書士に依頼したりすることで、コストダウンは可能だ。抵当権の抹消にかかわる司法書士の報酬は5000円~2万円程度となっている。
ただし、これらが可能なのは、住宅ローンを完済していて、抵当権だけがそのままになっているケースに限られる。住宅ローンの残債があるときは、買主にこれから融資する銀行手配の司法書士に委託するのが一般的だ。
法的には、残債があっても、自分で手続きしたり、司法書士を手配したりできる。しかし、現実に銀行が応じることは少ない。なぜなら、売主と司法書士に手を組まれて、銀行側が詐欺に遭うリスクがあるからだ。
なお、残債を一括返済する場合、繰り上げ返済扱いとなる。住宅ローンの契約内容によって、繰り上げ返済手数料がかかることもあるので注意したい。
(4)測量費
物件の売却における測量は、隣接する土地との境界を明らかにする目的で行われる。専門業者が測量を行い、仮の境界を定めた後、土地の権利者が立ち合って確認する。合意に至った場合、「境界確認書」という書類を交わし、「確定測量図」が作成される。
すでにこの確定測量図が作成されている場合、改めて測量する必要はない。一方、同じ測量図であっても、法務局で取得可能な「地積測量図」や、隣地の所有者の境界確認のない「現況測量図」は売買契約では使用できない(「現況測量図」については、隣地の所有者の立ち合いのもとに境界確認がとれていて、売主・買主双方の承諾を得られる場合は認められる)。
確定測量図がなくても、売却はできるが、ご近所トラブルを避けるため、近年はないと、買い手を見つけるのが難しくなっている。特に私道のある場合、境界を明らかにするとともに、通行や掘削(水道管、下水管等を取り換える際に道路を掘ることを認める)の承諾書を取ることが必須だ。
測量の手配は不動産会社にやってもらえるので、手間はかからない。ただし、測量費は仲介手数料に含まれないため、売主が別途負担することになる。金額は土地の形状や面積、接道状況などによって変わってくるが、一般的な戸建ての場合、30万~50万円が相場。ただし、市有地や国有地に接しているなど、官民立ち合いが必要になるケースでは、60万~150万円ほどになる。
支払いについては、売却代金から差し引くところが多い。そうでない不動産会社でも、手元の資金に余力がなければ、相談に乗ってもらえるだろう。
確定測量図がないと売却価格を相当引き下げる必要が出てくるため、それなりのコストはかかるが測量費を支払ったほうが断然お得だ。ただ、費用をかけて測量を行っても、隣地の合意が取れないことも出てくる。そんなときは「筆界特定制度」(筆界=境界)というものがあり、法務局に測量の資料を提出するなどして、筆界特定登記官に境界を特定してもらうこともできる。特定まで平均で約11カ月かかってしまうことがネックだが、測量自体が無駄になることはない。
(5)ハウスクリーニング・補修費用
内覧者に好印象を与えるため、部屋全体もしくは部分的にハウスクリーニングを頼む人も多い。トイレや浴室、キッチン、レンジフード、壁クロスなどは、見た目の印象が部屋の印象に直結する部分。1カ所につき、5000円~2万円程度が相場となっている。
激しい汚れや痛みについては、リフォームも視野に入ってくる。特に、トイレや浴室などの状態によっては、それだけで内覧者に嫌悪感を抱かせかねない。一方で、リフォームをする以上、売却価格のアップにつながることが前提となる。上限をかけても100万円くらいにとどめ、効果の高いものに絞って行うのがいいだろう。不動産会社の担当者ともよく相談して決めたい。下表が主な部分の補修費用だ。
| ◆主な補修費用(本体交換の場合) | |
| キッチン | 100万~300万円 |
| トイレ | 20万~30万円 |
| 洗面所 | 15万~30万円 |
| 給湯器 | 30万~40万円 |
| 浴室 | 100万~200万円 |
| 床 | クロス0.15万~0.25万円/㎡ フローリング1.5万円/㎡ 畳1.5万~3万円/畳 |
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(6)インスペクション費用、瑕疵保険の検査料・保険料
いずれも、ハウスクリーニングや補修費用と同様に、物件の価値(=売却価格)を高めるための費用だ。費用をかけるかどうかは、売主の判断による。
インスペクションとは「検査」の意味で、住宅の専門家であるインスペクターに建物の健康状態を診断してもらうために費用がかかる。たとえば、戸建てなら「基礎に鉄筋は配してあるか」「シロアリの被害はないか」、マンションなら「給排水管に不具合はないか」「床に傾きがないか」などを検査してもらう。基本的な目視による診断費用は5万~10万円ほどとなっている。
インスペクションの結果は報告書にまとめられ、買主にとって購入の判断材料になる。マイナス情報があっても、買主側で対処できる問題なら、逆に安心して買ってもらえることが少なくない。買い手を不安にさせるのは「問題がある」こと以上に、「問題があるかわからない」ことだからだ。
一方の、既存住宅売買瑕疵保険とは、中古物件の引き渡し後に、構造的な不具合が発生した場合、1000万円までの補修費用を最長5年間保証するもの。加入するために検査料と保険料がかかるが、現状、瑕疵保険に入っていない中古物件が多いため、加入していると大きなアドバンテージになる。
瑕疵保険に入るには、インスペクションとは別に瑕疵保険専門の検査機関の検査を受け、合格する必要がある。検査費用と保険料を合わせて、4万~8万円ほど。支払うのは加入時の1回だけとなっている。
なお、2018年4月に改正宅建業法が改正となり、インスペクションをした場合、重要事項説明で宅建業者は買主に対して、インスペクションの結果について説明を行うことが義務化された。もし、欠陥が見つかった場合でも、説明しなければならず、悪い結果を隠すことはできないので、何らかの不具合を感じている売主にとっては悩ましいところだろう。
(7)そのほか、売却前後にかかる費用・税金
(1)~(6)のほかにも、売却前後にかかる費用がいくつかある。たとえば「解体費」。しかし、余程の事情がない限りは、解体せずに現況のまま売却することをおすすめする。更地にすると、住宅用地の特例を受けられなくなって、翌年から固定資産税や都市計画税が高くなってしまうためだ。売却が長引けば長引くほど、税金負担が増す。そのため、買主が更地を望む場合、「更地渡し」という特約を付けて、引き渡し時までに更地にする条件で売買契約を結ぶのが賢明だ。
解体費は地方よりも都会のほうが高く、さらに接道している道路の広さなど、作業のやり易さなどによっても変わってくる。東京都内の一般的な解体工事の場合、坪(3.3㎡)単価は木造住宅3万~4万円、鉄骨造4万~5万円、RC造5万~6万円程度が相場。地方の場合、これより1万円程度安いことが多い。
なお、不動産業者経由で頼んだ場合、バックマージンが乗せられることもある。安く済ませるには、自分で複数の業者から見積もりを取ったほうがいいだろう。
また、空き家などを整理する場合には「廃棄処分費」が発生する。言うまでもなく、家電や家具、本などは専門の買取業者に依頼すれば、いくらかのお金になる。不用品回収業者にまとめて依頼する場合、廃棄処分費は、エレベーターの有無やゴミの量などによって大きく変わってくるが、おおよその目安は下記のとおりだ。
| ◆廃棄処分費の相場 | |
| 部屋の広さ | 処分費用 |
| 1K・1R | 3万円~ |
| 1DK | 3万5000円~ |
| 1LDK・2DK | 6万円~ |
| 2LDK・3DK | 9万円~ |
| 3LDK・4DK | 15万円~ |
ほかにも、どこかへ移り住む場合は「引っ越し費用」もかかる。荷物の量のほか、季節によっても金額が変わってくる。2~4月は料金設定が高くなるところが多い。なお、引っ越し業者の中には、不要品の引き取りサービスを行っているところもある。手間はかかるが、コストダウンを図るなら、引っ越し業者と、上述した不用品回収業者の双方から見積もりを取るといいだろう。
以上のほか、「所得税」や「住民税」もあるが通常、自宅の売却であれば3000万円までの売却益には税金がかからない。ただし、いくつかの例外があるので、詳しくは下記の記事で確認しよう。
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削れる費用は削りつつ、競争力アップを目指して
「売却益」の最大化を狙え!
ここまでみてきたように、不動産売却の前後にかかる費用は多数あり、売値に対して3%~10%程度かかる。売却金額をまるまる手に入れられるわけではないので、気をつけよう。
なお、費用の中には、工夫次第で金額を抑えられるものがある。
たとえば(3)の「抵当権抹消登記費用」は、自力で作成、または、よりリーズナブルな司法書士を探すことで節約できる。よりリーズナブルな専門業者に依頼する点では、(8)の「解体費」も同様だ。また、(6)の「インスペクション費用」と「瑕疵保険の検査費用」、(8)の「廃棄処分費」と「引っ越し費用」のように、依頼先をひとつにまとめることでコストダウンを図る方法もある。
一方で、(4)の「測量費」や(5)の「ハウスクリーニング・補修費」、(6)の「インスペクション費用、瑕疵保険の検査料・保険料」のように、売却する不動産の競争力アップや、売却価格のアップを狙うための費用もある。
削れる費用、かけるべき費用を知って、売却益の最大化を目指してみてほしい。
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