「維持費が高い別荘」や「境界でもめてる土地」など、
もらったら困る不動産を相続したときの対処法とは?

2018年4月27日公開(2019年3月15日更新)
ザイ・オンライン編集部

相続が発生すると、相続人は亡くなった人が所有していた不動産をありがたくもらうケースが多いのだが、なかには貸地や遠方の実家・別荘、境界でもめている土地など、維持・売却にコストばかりかかり、むしろお荷物になる不動産が含まれることもある。こうした不動産を相続した場合、どうすればいいのかを整理してみる。

"難資産"になりやすい不動産とは?

 実際の相続では、「プラスの資産」だけを引き継ぐとは限らない。なかには、借金や未払いの税金など、「マイナスの資産」を引き継ぐこともある。

 また、一定の価値があり「マイナスの資産」とまではいえないものの、所有してもメリットの少ない資産を引き継ぐこともある。このようなメリットが少なくむしろお荷物になる資産を"難資産"と呼んだりする。

 "難資産"の特徴は、「分けにくい」「使いにくい」「売りにくい」「コストがかかる」「手間がかかる」といったことで、そんな"難資産"になりやすい典型が、建物や土地などの不動産だ。

 不動産はもともと、「分けにくい」。建物土地は現金のように、簡単に分割することができないからだ。

【関連記事はこちら!】
>> 広大な土地は買い叩かれやすいので、自分で分割・開発して販売しても問題ないのか?

10万円で売りに出されたリゾートマンションの
年間の維持費は約50万円

 また、地方にあったり、都市部でも最寄り駅から遠かったり、道路付けが悪かったり(旗竿敷地や無道路地など)する不動産は、そもそも使いにくいし売りにくい。

 リゾートマンションや別荘になると、ほとんど使わなくても、毎年の固定資産税や管理費といったコストがかかる。

 たとえば、スキーリゾートとして有名な新潟県の湯沢には最近、10万円で売り出されている1LDK66㎡の中古リゾートマンションがある。ただし、管理費と修繕積立金が毎月約3万2000円、固定資産税も年間約9万5500円、合計すると年間約47万8000円もかかる。

 湯沢ではこうした激安のリゾートマンションや別荘が結構、売りに出ている。相続したものの所有コストが馬鹿にならないので、とにかく手放したいというケースが多いのだろう。

 そのほか、隣地との境界線がはっきりしない土地や、境界でもめている土地は、意外に都市部にもある。こうした土地は面積が確定できないので、すぐには売れない。測量や隣地所有者との境界画定などで手間がかかる。

【関連記事はこちら!】
>> 「家の売却にかかる税金」を、安くする方法は? 自宅、賃貸、相続した空き家など、不動産ごとに異なる控除など節税方法や、税金の計算式を紹介

相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3パターン

 こうした"難資産"の不動産を相続しそうになった場合、どのような対応が考えられるのだろうか。そもそも相続には次の3つのパターンがある。

(1)単純承認
(2)限定承認
(3)相続放棄

 相続では亡くなった人の財産を、プラスのものもマイナスのものも、すべて引き継ぐのが基本だ。これを「単純承認」という。

 しかし、一定の期間内に家庭裁判所に申し出ると、「限定承認」や「相続放棄」をすることもできる。

「限定承認」とは、亡くなった人の資産を相続した人が、「プラスの資産」の範囲内で「マイナスの資産」も一緒に引き継ぐものだ。

 借金などマイナスの資産がプラスの資産より明らかに多い場合や、隠れた借金がありそうな場合などに有効とされる。また、結果的にマイナスの資産よりプラスの資産のほうが多いことがわかったら、その分はそのまま相続できる。「どうしても実家だけは相続したい」など、特定の資産を相続する可能性を残したいときに有効な手だ。

 「限定承認」を選択するには、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に、“亡くなった人”が住んでいたエリアを管轄する家庭裁判所に申し出る必要がある。

 また、「限定承認」を選択するには、相続人全員が一緒に申し出なくてはならない。相続人のうち一人でも反対すれば、ほかの相続人も限定承認をすることはできない。ただし、次にふれる「相続放棄」をしている人は別で、「相続放棄」をした人以外の相続人が同意していれば「限定承認」の申し出は可能だ。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産を相続すると、なぜ電話やDMが来るの? 調査方法は違法なのか、信頼できるのかを解説

「限定承認」や「相続放棄」は、相続開始から3ヵ月以内

「相続放棄」とは、プラスの資産もマイナスの資産も、とにかく一切相続しないという方法だ。プラスの資産よりマイナスの資産のほうが"はるかに多い"ことがはっきりしているような場合は、「相続放棄」したほうがよいだろう。

 「相続放棄」を選択するには、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に、やはり“亡くなった人”が住んでいたエリアを管轄する家庭裁判所に申し出なくてはならない。

 また、「相続放棄」は「限定承認」と違って、それぞれの相続人が単独で行うことができる。そして、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされる。

 繰り返しになるが、「限定承認」も「相続放棄」も、相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に手続きしなければならない。期限を過ぎると、「単純承認」したことになってしまうので注意が必要だ。

"難資産"の不動産は、自治体に寄付もできない

 実際の相続でよく問題になるのは、「単純承認」したものの、相続した資産の中に"難資産"の不動産が含まれていて、その扱いに困るケースだ。

 苦肉の策として、地元の自治体に寄付できないか、あるいは所有権を放棄できないか、考えてみる人もいるようだ。

 しかし、自治体がこうした"難資産"の不動産を寄付で受け付けることはまずない。現金などであれば喜んで寄付を受けるが、使い道のない資産をもらっても困るだけだからだ。

 不動産については、各市町村は固定資産税を課税している立場であり、道路や公園をつくる予定があるなど例外的な場合を除き、みすみす大事な税収を失うことなどするはずがない。

 それでは、所有権の放棄はどうだろうか。

 "難資産"の中でも、骨とう品や自動車などの動産であれば、多少の費用はかかるかもしれないが、廃品として処分すれば済むだろう。

相続した不動産は、使うか、売るしかない

 問題となるのは、やはり不動産、特に"土地"だ。

 家は取り壊したうえで、市町村に届ければ、固定資産課税台帳から削除され、固定資産税はかからなくなる。

 だが、土地については物理的になくなるわけではない。そもそも、民法に規定されているのは所有者のいない場合の取り扱いだけだ。

(無主物の帰属)民法第239条
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

 理屈の上では、所有権の放棄ができ、所有者のない不動産となれば、国の財産になる。しかし、そもそもどのようにすれば所有権の放棄ができるのかは、はっきりしない。

 「はっきりしない」とは、明確な法律上の規定や手続き(特に登記)のやり方も決まっていない以上、実際には「できない」ということと同じである。

 実務的にも、"難資産"の不動産を手放したいからという動機で勝手に所有権を放棄できるとなれば、大きな混乱を招くだろう。

 "難資産"​の不動産を相続したら、自らの努力で「使う」か「売るか」、するしかないのが現実である。

【関連記事はこちら!】
>> 家を高値で売りたいのなら、絶対に知っておきたい「売主のためのレインズ活用法」売主が損しても分かりにくい仕組みなので注意を!

相続放棄しても、管理責任は残る

 では、先ほど触れた「相続放棄」を活用するとどうなるのだろうか。

 相続人全員が「相続放棄」を家庭裁判所に申し出て認められれば、亡くなった人が所有していた不動産の所有権が移ることはない。その不動産にかかる固定資産税を支払う義務もない。

 "難資産"を含め、亡くなった人が所有していた不動産の名義は亡くなった人のままであり、まさに「所有者のない不動産」となる。

 しかし、問題は相続財産の管理責任が残ることだ。民法では、「相続放棄」をした者の管理責任を定めている。

民法第940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

 

相続前に早めに手をうつことが重要

 つまり、別の誰かが不動産の管理を行う時点まで、「相続放棄」をした相続人が管理をしなければならない。

 そして、「相続放棄」した相続人がこの管理責任から逃れるには、相続財産管理人が裁判所で選任されることが必要とされている。相続財産管理人には、弁護士や司法書士などが選ばれることが多い。

 相続財産管理人の選任には、必要書類などを用意して家庭裁判所に申し立てるが、その際、相続財産管理人への報酬などにあてるため、予納金が必要となる。

 予納金の額はケースによって異なるが、100万円程度になることも多い。

 「相続放棄」の場合も、ここまでして初めて"難資産"の不動産から解放される。これがイヤなら、相続前に早めに手をうち、なんとかして売却、処分しておいたほうがいいだろう。

 なお、実際に売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼するのがいいだろう。その際、「不動産一括査定サイト」などを活用すると、複数の会社に簡単に査定を依頼できるので便利だ。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産一括査定サイトを主要12社で比較! 「不動産の種類」「掲載不動産会社」「メリット・デメリット」「掲載社数」で評価しよう

TOP