家の売却を依頼した不動産会社は「味方」でなく、
物件情報の拡散にブレーキをかける「敵」だった!
売り主にとって大切な「広告転載」を理解しよう

【第8回】2018年7月19日公開(2020年6月10日更新)
風戸裕樹:PropertyAccess.co CEO & Founder

家やマンションなどの不動産を売ろうとしている人は、できるだけ早く、売り出し価格で購入してくれる買い主を見つけたいはず。そのためには多くの購入希望者の目に留まるように、物件情報がいろいろな物件情報サイトに掲載される方が好ましいはずですが、日本ではそれが難しくなっています。今回は不動産業界の課題である「広告転載」の裏側について解説します。

物件情報は「レインズ」に登録される

 ここで、不動産を売却する際の、主な情報の流れを見ていきましょう。

 売り主が不動産会社に物件の売却を依頼する時には通常、不動産会社と「媒介契約」を結びます。このうち「専属専任媒介」と「専任媒介」の物件情報は、全国4つの指定不動産流通機構(レインズ)に登録することが義務付けられています。より多くの不動産会社に情報提供することで、効率的に買い主を探して取引を成立させるのが目的です

 レインズは業者間の物件情報ネットワークで、加盟している不動産会社であれば、これらの物件情報を自由に閲覧でき、買い主を探してきて取引することができます。ただし、一般の人は見ることができません

 レインズの設立目的を考えれば、レインズ会員の不動産会社が、買い主を探すために、自社サイトに物件を掲載したり、自社のチラシに載せたりすることは問題ないように思われます。

 ところが、物件情報の取り扱いには情報を登録した不動産会社(登録業者)の承諾を得ることが義務付けられているのです

登録された情報の大半は、広告の転載が「不可」

 レインズを見ると、各登録物件には「広告転載区分」という欄があり、最初から「広告可」と表示されていれば、すでに承諾を得たことになり、物件番号などを適正に管理するだけで、広告の転載が可能です。

 しかし、そうした物件はごく一部です。大半の物件は、「広告不可」となっています。

 「広告不可」となっている場合、登録業者に「文書による承諾」を得る必要があり、いまだに物件ごとにファックスでやり取りしているのです。

 以下が、業界団体が作成した「承認依頼書」の雛形です。なんと、代表者のハンコを押す欄まであります。

「業界団体の広告掲載・宣伝告知承諾依頼書の参考様式」、出所:公益社団法人近畿圏不動産流通機構「業界団体の広告掲載・宣伝告知承諾依頼書の参考様式」、出所:公益社団法人近畿圏不動産流通機構

 また、物件を転載させてもらっている業者は、定期的に登録業者に「販売を継続しているのか」を確認する必要もあります。それだけで大変な手間と労力がかかるのです。不動産業界はIT化が遅れているため、この確認作業はほとんど電話で行っています。恐ろしく省力化が遅れている、非効率な業界なのです。

 また、そもそも広告の転載を依頼しても、断られるケースも多いと聞きます。積極的に情報を発信する気がない不動産会社も結構あるのです。

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両手取引を狙っているため、広告の転載をさせない

 なぜ、不動産会社は広告転載に消極的なのでしょうか。そう、彼らは、このシリーズで何度も取り上げている「両手取引」を実現させたいので、他の不動産会社にはなるべく広告・宣伝をさせたくないのです

 特に、買い主にとって魅力的な優良物件であればあるほど、物件検索サイトに広告を掲載しなくても、すぐ買い主が見つかる可能性は高くなります。売り主と買い主の両方から仲介手数料を得る「両手取引」に簡単に持ち込めるというわけです。

 顧客情報を多く保有しているため買い主を見つける力がある大手仲介業者ほど、広告掲載の許可を出さないという話も聞きます

広告転載を拒否する理由は、根拠が薄い

 物件情報の転載を厳しくしている根拠は何でしょうか。

 まず、転載広告という行為が規制の対象となるからと説明されています。

 ネットやチラシに物件情報が掲載されるということは、「広告」と同じで、不当景品類及び不当表示防止法(1962年制定)の対象となる「不動産広告」になります。情報を発信する広告主=登録業者には、不動産の表示に関する公正競争規約(公正取引委員会告示)に基づく広告規制が課せられているため、広告を転載するにも許可が必要という理由としているのです。

 しかし、もともとのレインズに掲載する情報は、業者間で見ることができます。業者間は不動産広告に当たらないからといって、いい加減な情報を載せるのは望ましくない行為です。最初から、レインズにも広告規制をかけるべきではないでしょうか。

 また、「レインズ情報取り扱いガイドライン」(不動産流通機構)には、承諾が必要な理由として「売却の依頼者や元付(登録)業者の中に客付業者が広告を掲載することを望んでいない場合がある」と書かれています。ただ、望んでいない理由が何であるかは全く書かれていません。

 売り主は、「どんどん宣伝してもらいたい」というのが基本です。「近所の目もあるから、隠密に売って欲しい」という特殊なケース以外は、情報を拡散して欲しいはずです。

 消費者に正しい物件情報を提供するために広告規制があるのでしょうが、「両手取引のための道具」として利用されてきたとの印象も否めません

契約時に「広告転載可」にしてもらおう!

 媒介契約を結んだ不動産会社は「売り主の味方」だと思っていたが、実際はライバル他社への「広告転載」を認めないで、両手取引を実現させて手数料をがっぽり稼ごうとする「売り主の敵」だった…。こんなことが不動産売却の現場では起こっているのです。

 誰もが公平にできるだけ多くの不動産情報にアクセスできるようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。

 まず、売り主ができるのは、契約時に「広告転載区分は『広告可』にしてください」と依頼することです

 また、レインズに登録された物件情報は、会員であれば自由に広告できるようにするべきでしょう。ただし、物件広告がどのサイトに転載されたかを管理するプラットフォームは構築すべきでしょう。そうすれば、業界全体の生産性向上にも寄与するはずです。

 さらに将来は、物件情報を不動産会社だけで共有するのではなく、広く一般公開することも議論していく必要があるでしょう。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

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