共に大学入試に関わり続けて40年近くになる二人が、忌憚(きたん)なく、大学入試の実情について語り合った。

新型コロナウイルス禍で教育界が混乱を極めた2020年。中でも、大学受験生は甚大な被害を被っている。大学と大学入試を40年近く見つめてきた旧知の間柄でもある大学通信の安田賢治さんと教育ジャーナリストの後藤健夫さんによる「Y&G大学対談」が、年内に行われている入学者選抜の底に潜む闇に切り込んだ。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/倉部和彦)

コロナで開いた大学入試“パンドラの箱”

 2021年1月に初めて実施される「大学入学共通テスト」を回避すべく、なんとか年内に合格を勝ち取りたいと考える高3生は多い。総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(指定校推薦入試)に殺到するかと思われたものの、そこには落とし穴が待ち受けていた。

安田 今年は総合型選抜(AO入試)にあまり志願者が集まっていないようです。前年比で2割、3割と減っている首都圏の大学もあるとか。スポーツ大会とか、文化的な授業とか、長期休暇に海外研修に行くとか、それらが全部ダメになり、出願資格を満たすことに問題が生じてしまった。

後藤 新型コロナの影響で資格要件がそろわずに出せない、出しにくい。ここ数年は総合型選抜に流れる動きが強かった。もうバレてしまったのですよ、大学に行くのに一般選抜(一般入試)を受ける必要はないことが。

安田 ああ、そうですね。

後藤 ここ数年、受験生の超安全志向によって、先輩がAO(総合型選抜)や指定校推薦(学校推薦型選抜)でどしどし進学した。その流れを高校側も止められなかった。下級生はみんなそれを見ているので、一般入試なんかどうでもいいやと思うわけです。問題なのは、そうした生徒が今から一般選抜といってもうまくいかないことです。

安田 むしろ学校推薦型に行きますよね。

後藤 ところが、学校推薦型では成績が問われる。推薦に必要な評定平均値は高3夏の段階のものです。そこに“パンドラの箱”が開いています。コロナで高3の1学期や高2の学年末の定期試験が例年のように実施できず、きちんと評定が付けられていないことがある。高校を卒業するための単位認定なら年度末でいいのですが、こうした事情を大学側がどこまで分かっているのか。

安田 これまで総合型選抜に流れることで一般選抜の志願者が減った大学もあります。文部科学省は今年の入試から総合型と学校推薦型の選抜には学力試験を課せと言っていました。でも、数学や英語で課したとか聞いたことがない。コロナの話ばかりになってしまって。

後藤 もう、うやむやですよ。とりあえず出願資格が整わないと願書を出してもらえなくて、受験生になれないわけです。学力の三要素(基礎的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等の能力、主体的に学習に取り組む態度)をそれぞれの試験方式に課すというけれど、一般選抜で主体的に学習に向かう力なんて全然見ないでしょう。

安田 そうですよね。「JAPAN e-Portfolio」も8月に文科省に許可を取り消されてしまった。早稲田も慶應義塾も独自に出願時に書かせて、入学後の参考にするけど、選抜の評価にはしないと言っていました。

後藤 それでデータを蓄積していずれ入試での評価に活用するつもりでいた。でも、入学前の段階で評価されないという時点で選抜の評価の要素から外れている。それで学力審査もしなさいよというのが総合型選抜における流れでしたが、それもどこ行っちゃったのでしょうね。

安田 (大笑)

後藤 学力の3要素って、あれは実は2要素です。知識・技能と思考力・判断力・表現力とは地続き、一つの認知能力でしかない。で、学習に向かう力というのは情動的スキル、非認知能力ですね。文科省が本当に言いたかったのは、日本の入試は認知能力に傾きすぎているから、非認知なスキルも合わせて考慮させるため3要素をみんな見よう、なのです。

 だから本当は、一般選抜でこのことを見なければいけない。年明けから始まる一般選抜が、コロナの関係で本当に実施できるかどうかを含めて、2021年大学入試のかなりの不安材料になっています。