誰も読まない「調査書」を書かされる先生の悲劇
後藤 学校の先生からすると、学校推薦型や総合型で必要となる「調査書」を書かされるという問題があります。あの中身に興味があるのはいったい誰なんでしょう。
安田 大学の人に聞くと、「結局、調査書って先生の作文だから」という。本来なら「JAPAN e-Portfolio」のように子どもが本当に書いたものを見たいのが本音としてあります。
後藤 書く方もひな型を見て書いているのでしょうが、推薦型では調査書の評定平均しか興味をもっていません。そもそもその高校を信頼しているわけで、良いことしか書かれていないことは分かっている。それなのになんで調査書を書かせるのか。
安田 一般選抜ではほとんど見ていないでしょう。開けた形跡すらないと大学職員から聞いたことがある(笑)。
後藤 提出されているかは見ていますが、中身には全然興味がない。でも高校の先生方からすると、あの文章量を書かされるというのは不幸でしかない。だからこの文化を早く変えなければいけない。
安田 でも、なんかたくさん書いた方が良いのではと、神話のように先生方も思っているのではないですか。
後藤 それを全部読まされるのはすごい負担です。箇条書きで端的にポンポンと書いてあればちゃんと判定できる。まあ、実際には判定しないでしょうけれども(笑)。
安田 それだったら、受験生が自分でしゃべる1分間動画の方がいい。1分って結構あるし、見る方も1分で終わるわけじゃないですか。
後藤 ある本によると、アメリカの大学の審査において、書類を見るのは1人あたり2分間だそうです。それだけしかかけられない。
安田 今度、調査書は電子化されるじゃないですか。
後藤 電子化されたらもうコピペの嵐ですよ。
安田 そうでしょうね、おそらく。全員が同じところを受けるわけじゃないから、同じ事が書いてあっても、ということになりますよね(笑)。
後藤 調査書の意味がほとんどなくなっていきます。もっというと、小学校から高校までの成績に関心があるのは誰かということです。中学受験では関係ないですよね、成績は。
安田 関係ないですね、一切。欠席日数だけです。
後藤 高校入試では内申が何点というのはあります。だから、高校受験をする中学生は自分の成績に関心がある。高校生は奨学金と学校推薦型。多少、総合型も気にするくらいかと。
安田 そうですね。それを課している学校もありますから。
後藤 世の中の受験生の何%が学校の成績に本当に興味あるのか。すごく少ないでしょう。それも不幸ですね。文科省って罪作りです。たくさん書けば何か分かるっていうのはナンセンスです。それが変な文化を生んでいる。