確実に易化していく大学入試

安田 国立大学でも入学定員の3割は学校推薦型や総合型の非一般選抜で取ろうという目標を掲げて、今年は東北大学が定員を増やしています。東大は100人から変えないという話ですが。

後藤 例年の合格者数が70人前後で、募集定員が埋まっていないからですよね。

安田 これまでは各校男女1人ずつで、男女別学校は1人しか学校推薦できなかったものを、枠を広げて各校4人まで、うち男女はいずれか3人までとなりました。別学校の枠が3倍に広がったことで出願者が90人以上増え、募集定員の100人程度は取れそうな感じです。東大は共通テストの成績も求めていますが、ここでも調査書自体が問題になってくる。

後藤 調査書と同時に、個々の授業による成績評価も問題になります。成績を観点別評価で行うことは、高校の先生が下す評価に不安があると思う。これは結構教育に影響することで、早くなんとかしないと先生たちがかわいそうです。

安田 本当にかわいそうです、保護者からも突き上げられて。進学校で「指定校推薦があるのだったら、その枠を使わせて」とかいう話はよく聞きます。

後藤 でも、学校側は隠しているところもあるでしょう?

安田 そうそう、進学校になればなるほど 。

後藤 一般の学校だと指定校推薦一覧が張り出されますが、進学校になればなるほど生徒には知らせない。「指定校推薦で」と生徒が言いに行くと、「ちょっと考えろ」と言われる。学校の都合で止めているのは、一般選抜を第一義にクラス運営する“受験は団体戦”だからですよね。

 少子化なので、以前に比べて入試は圧倒的に楽になっています。1992年の偏差値50と2020年の偏差値50では明らかに違う。偏差値は相対値であり、母集団が変われば評価は変わります。

安田 団塊ジュニア世代に合わせて1990年代には東大の学部の募集人員が3600人ほどでしたが、今は18歳人口が当時の6割になっているのに3060人です。明らかに入学者の水準は相対的に落ちている。東大に限らず、すべての大学で。

後藤 これまで入学できなかった層も拾っている。これを続けていると何が起こるか。昔、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とビートたけしが言っていましたが、勉強なんてしたくないからどんどん水準は落ちていく。どうやって生徒に勉強するエンジンをかけるかが重要になります。元来あるはずの生徒の学ぶ姿勢を信頼して待てば良いのだろうが、大学進学までの限られた時間では間に合わない。そのためには、偏差値に示されるような相対値ではなく絶対値の方に変わらなければなりません。これが、共通テストは大学のものだけではなく高校のものにもしなくてはならないということです。

 目標を設定し、段階別評価をして、受験生にはそれをクリアさせる。そうでもしない限りは受験生のモチベーションはまだ下がっていくと思います。今の学校の先生は一斉授業がうまいので、本当はそれが起こらないはずですが、でも現実に起きている。授業が探究型になるにもまだまだ時間がかかる。だから、そこから教育を捉え直さないといけない。そのためにも大学入試自体も問い直さないといけない。