高2の文理分けは何のために行うのか
後藤 ところで、多くの進学校では高2の段階で文理選択をさせます。これって、何のためにするのでしょうか。
安田 結局、大学入試の科目を絞るためですね。
後藤 その入試っていうのは……。
安田 一般入試の私大文系3教科ですね。
後藤 さて、その高校でいったい何人が私大の一般選抜を受けるのかという話です。高校での文理への振り分けは一般選抜に対する合理性でしょうから、それを受けない生徒に必要ない。文系だって数学が好きな生徒はいるし、経済学や心理学をやろうと思ったら絶対に数学は必要です。総合型や学校推薦型で進学する生徒が多い高校では、その点で、進路指導って素人化しているのではないかと思う。クラス分けは一般選抜を目指す生徒とそうでない生徒とを分けた方が合理的。前例踏襲なんてナンセンス。
安田 今年の受験生の入試は、進路指導の先生方が腕を試される時じゃないですか。併願先をどこにするのかも含めて。生徒はオープンキャンパスにも行けなかったわけですから、狭い範囲から志望校を選ぶに決まっています。進路の先生がこんないいところがあるぞと言ってあげないことには、みんな有名校ばかりを受けて……。
後藤 玉砕するわけです。こういう流れが続いているから、一般選抜に受験生が集まってしまうMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)の各大学が、総合型選抜になかなか大胆に踏み込むことができずにいる。
安田 1980年代でしたか、一般入学者がほとんどの時代でした。ある有名私立大学の教授が「推薦入試入学者の中には、『自分は周りとは違う』と思ってしまって、大学の学びに力が入らない学生がいるので、推薦枠は広げない」みたいなことを言ったことがありました。AO入試(総合型選抜)は慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)で始まるまではありませんでした。それが今ではガラッと変わって、「こんないい選抜方法はない」に変わっちゃったわけですから。
後藤 今では地方の高校は東大なんか目指さない。SFCの総合型選抜を目指す。特に新興の私立中高一貫校とかはそうで、公立高校にもその波が来ているように思います。SFCで総合政策学部長を務めた河添健さん(現・東京女子学園理事兼中学校・高等学校長)が言うには、「日本になぜGAFAが出てこないのか。教科横断とか見ていないし、学生のモチベーションを上げていないし、至るところに問題があるからだ」なんだそうです。